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染色の教科書〜よく染まり、色落ちしにくい生地づくりに必要な知識

この記事には、染色に関する知識を少しずつ書いていこうと思います。
大部分の記事が消えてしまったので、また頑張って作成していきます!

染色・染料とは?

Check🔖(ポイントまとめ)
・未記入

染色とは、繊維を好みの色に着色することを言います。ただこれだけのことですが、染色に関する本は数多くあり、奥はかなり深いです。

繊維を染色するためには、各繊維に適した染料を選ぶ必要があります。
染料とは、色を持つ物質のうち、繊維に対して染着力がある物質のことです。
染色についてもう少し具体的に説明しますと、染料溶液中の染料が繊維内部に出入りを繰り返し、平衡状態に達したとこで染料溶液中の染料濃度と繊維中の染料濃度が一定の割合になることをいいます。

染着力

染料と繊維が結合する染着力には、以下の①〜⑤の5つがあります。結合の強さは、①<②<③<④<⑤の順で、例えば、⑤の結合が多いほど、色が落ちにくくなります。

①ファンデルワールス結合:近くの分子間にだけに働く力による結合
②水素結合:OHやNHなど電気陰性度の高い原子に共有結合した水素原子が、他の官能基の非共有電子対と作る結合
③イオン結合:陰イオンと陽イオンの間に働く静電気的な引力による結合
④配位結合:電子対が一方の原子からのみ出されている共有結合
⑤共有結合:互いに電子を出し合い、電子対を共有することによって得られる非常に安定な結合

結合の豆知識
各結合には、結合できる距離というものがありまして、水素結合は1~2nm、ファンデルワールス力は1~数十nm、イオン結合1~100nmなので、水素結合やファンデルワールス力は、染料の分子が繊維の中の分子にしっかり近づくことが重要となります。染料の分子のサイズが小さくて結合できる分子数が限られていても、染料の分子が繊維の中に隙間なく入っていれば、総合的な結合力は強いものとなります。

染料の種類と特徴

素材とそれに適した染料の関係を以下に示しておきます。
上の結合力の話からすると共有結合がある反応染料が一番結合が強いことになりますよね。
建染、硫化染料なんかは、弱い結合しかないんですが、水に溶けにくい性質があります。なので、繊維の中に入ってしまえば、洗濯してもなかなか出てこないといったことがあり、一概に結合力だけでいい染料か悪い染料かを判断することはできません。
続きが気になる方はぜひ下も読んでみてください。

水に簡単に溶ける染料1
・直接染料、酸性染料、塩基性(カチオン)染料
→何もしなくても染まってくれます
※酸性染料は、直接染料よりも分子サイズが小さく、イオン結合が中心なので、水の中で切れやすく堅牢度が低い

水に簡単に溶ける染料2
・反応染料
→染料の染着力を強めるためにアルカリを加えます→共有結合するため、ものすごく耐久性があがります
※反応染料は、分子サイズが非常に小さいので、鮮やかな色が出やすい
※反応染料は、基本的には酸性染料のことで、酸性染料の堅牢度を上げるためにアルカリを追加しています

水に簡単に溶ける染料3
・酸性媒染染料、酸性含金染料
→染料の染着力を強めるために金属イオンを加えます→配位結合(共有結合みたいな)するため、ものすごく耐久性があがります
※金属と繊維、金属と染料がくっつくイメージ

水に溶けにくい染料
・分散染料
→染料自体が大きいので、加熱して染料を水に溶けるように小さくします

水に溶けない染料
・建染染料、硫化染料
→還元して水に溶けるようにします、ただ、無色状態になるので、酸化して色を復元させます

ここから、もう少し詳しく各染料についてみていきます!



直接染料:

水に溶かすだけで直接染めることができる染料のこと
水溶性でかつ水素結合とファンデルワールス力だけで染着
しているので、脱色性がよくて染め直しが簡単にできます。
染色装置の中を中性にしておけるので、腐食がないのもいいです。
ただ、洗濯や汗などに対する湿潤堅牢度と塩素堅牢度が低いのは弱点です。鮮明な色のバリエーションが少ないのも特徴です。

直接染料の染色方法:染色温度が高いほど染色速度がはやく、均染性もよくなります。
ですが、平衡染着量(いい感じに染まった状態)が下がっていくので、75~98℃ぐらいで染色します。
温度が高ければ、繊維の中にはやく入っていくが、出てくるのもはやいということです。よく染まっても染まるのが遅すぎると困るので、温度や染色時間などは各工場ごとに違うんでしょうね。
また、高温だけでなく、一般的に浴比(布と染料液の重さの比率)が小さいほうがよく染まるようになります。

直接染料の注意点①:
直接染料は、ふつうは酢酸などを用いた弱酸性のpHで染着率が高くなるのですが、黒色の染料の一部にアルカリのpHでよく溶けて濃く染まるものがあります。また、アルカリのpHだとビスコースレーヨンを用いた布を染めると硫黄が発生してしまうこともあるので気をつけなければいけません。

直接染料の注意点②:
硬水の使用による染色不仕上がりを防止するために金属封鎖剤と言うものがあります。この金属封鎖剤の中でEDTAなどを含金属の直接染料と一緒に使用してはいけないとされていましたが、問題ないものが多くなってきています。むしろ、水の質が悪すぎる場合は、1~2g/L入れたほうがいい場合もあります。

直接染料の注意点③:
湿潤堅牢度が低く洗濯するごとに色が抜けられては困るので、堅牢度を上げる染色堅牢度増進剤(フィックス剤)を用いることがあります。しかし、フィックス剤を使うと耐光堅牢度が低くなることがあります。なので、メーカにしっかりと耐光堅牢度が下がるのか確認しておく必要があります。また、フィックス剤を使うと布の色が変わる場合もあるので、そこも確認しておく必要がありますね。

直接染料について詳しく書かれている文献を見たい方はここをクリックください。

酸性染料:

酸性の液中で、羊毛・絹・ナイロンに染着性があるアニオン性染料のこと

酸性染料の染色方法:染色方法が羊毛とナイロンで異なります。羊毛は、使用する染料のタイプが3つあります。
3つのタイプとは、①均染型・②半ミリング型・③ミリング型のことで、母体の大きさが①が小さく、②が中間、③が大きいのが特徴です。①〜③で染液のpHを変えなければ上手く染まりません。
①均染型:pH 2〜4 ※ギ酸使用 中〜
②半ミリング型:pH 4〜5 ※酢酸使用 中〜
③ミリング型:pH 5〜7 ※硫安使用 〜淡
①〜③のいずれも染色温度は100℃で、40〜60分染色します。
ミンリグタイプが分子量が大きいので、ファンデルワールス力が大きく、堅牢度が高くなります。しかし、均染性が低く、染ムラが起こりやすくなります。
ナイロンは、使用する染料のタイプが2つあります。①均染型・②堅牢型の2タイプです。適切なpHについては詳しい文献を見つけ次第記入します。
反応染料のところでも書いていますが、ナイロンは、アミノ基が羊毛と絹に比べて少ないので、濃く染めることが難しいです。中濃色で染めたものの湿潤堅牢度を上げるために、タンニン酸、吐酒石、合成タンニンを使ってフィックス処理を行うのが一般的となります。しかし、フィックス剤を使うと風合いが硬くなり、色も若干変化します。湿潤堅牢度を求められない場合は、フィックス処理を行う必要はないかもしれませんね。


酸性染料について詳しく書かれている文献を見たい方はここをクリックください。

反応染料:

繊維の中の官能基(有機化合物の性質や反応を特徴づける原子の集団)と化学反応して共有結合により染着する染料のこと
反応染料の染色方法:反応染料には、低温、中温、高温染色型の3つのタイプがあります。それぞれに適切なpHがあり、だいたい11~12pHがよいとされています。低温タイプはpHが高く、高温タイプはpHが低く設定されます。このpHをコントロールするのにアルカリ剤が必要となります。よく使われるのがソーダ灰で、10~20g/L程度でpHが11.5になります。

反応染料の注意点①:
最適な温度よりも高温で染色してしまうと、加水分解反応速度が高くなり染着率が下がってしまいます。また、温度が低すぎると十分に染まらない問題も起こります。

反応染料の注意点②:
反応染料でナイロンを染めることも可能なのですが、ナイロンはアミノ基が羊毛の10~20分の1、絹の4分の1なので、羊毛や絹で濃色で染まる染料でも淡色にしかならない場合があります。

ソーダ灰の役割
ソーダ灰が少なすぎると濃色に染まりません。また、多すぎると染料の染着速度が速くなり、染めムラができやすくなります。

反応染料について詳しく書かれている文献を見たい方はここをクリックください。

分散染料:

疎水性で微粒子になるまで細くすることで水に分散させて染色する染料のこと
分散染料の染色方法:分散染料で染めるポリエステルやアセテートは、温度が低い状態では分散染料が入り込めるような隙間がありません。そこで、繊維を高温状態にすることで分子を動きやすくして隙間を作り出します。このとき、分散染料も温度上昇(120〜130℃)に伴い、染料の集合体がバラバラになり、隙間に入っていきます。その後、冷却されると隙間が閉じていき、染料が出てこれなくなり繊維に色が定着します。
※分散染料は、80℃ぐらいから分散剤が外れて粒状になっいきます。


分散染料の注意点①:
繊維内部に入れず、表面に残った分散染料は、他の生地に色移りする原因となるので、残った染料を化学的に分解しなければいけません。温度は、60〜80℃で処理されるため、繊維内部の染料は出てきません。

分散染料の注意点②:
120〜130℃で染色した後は、ゆっくり冷却していきます。急速で冷却すると生地にシワが残る可能性があるからです。

染色の目安
中・濃色→135℃×30分
淡色→130℃×20分
さらに薄い色→130℃×10分

冷却の目安
85℃×10分など


分散染料の豆知識①:
ポリエステルを他の繊維と一緒に染めたいときに、ポリエステルの染色温度が高すぎて他の繊維にダメージを与えてしまうことがあります。そんな時は、どうにかして染色温度を下げなければいけません。
染色温度を低くしてポリエステルを染めるために使えるものとして促染剤(キャリア剤など)があります。
キャリア剤は、染色速度、染着量線を増大させる効果のある剤のことです。キャリア剤は、繊維内に染料分子よりもはやく拡散していき、分子間力を切ってガラス転移温度を下げてくれます。
これによって分散染料の拡散を容易にしてくれます。常圧下で100℃で染色可能となります。ただ、耐光堅牢度が下がる欠点があります。

カチオン染料(塩基性染料):

アクリル繊維やスルホン酸ナトリウムを繊維末端基にランダム共重合させたボリエステル繊維と、イオン結合させて染める染料のこと

カチオン染料の注意点①:
分散染料とカチオン染料を併用する場合、分散性カチオン染料を使用します。分散染料のイオン性がマイナスなので、イオン性がプラスの塩基性カチオン染料を使用すると沈殿が生成してしまいます。

カチオン染料の豆知識①:
カチオン染料のうち、分散性カチオン染料より塩基性カチオン染料のほうが染着性が高いです。

カチオン可染PETの知識①:
カチオンPETの特徴は下記となります。
・ソフトな風合い
・鮮明性→カチオン染料がきれいな色出しやすい
・抗ピル性高い
・高湿潤堅牢度

芒硝について

すごくわかりやすいサイトはここをクリック

芒硝を染色時に使う理由は、濃く染めるためです。あと、安いからです。
濃く染まる理由は、染色の途中で、水に溶けやすい芒硝を入れると、先に溶けていた染料が個体になって、繊維の中から出てこれなくなり繊維の中に残りやすく、色が薄くなりにくくなるからです。おそらく。

染料についてもっと詳しく!

染料の化学構造の設計は、現在では量子化学計算によって吸収スペクトルを求めることによって行われます。少し前までは、もっと簡便な発色団、助色団の考え方によって行われました。
有機化合物が色を持つためには特定の不飽和結合を持つ原子団の存在が必要であり、これを発色団と呼びました。
発色団にはアゾ基(-N=N-)、ニトロ基(-NO2)、ニトロソ基(-N=O)、カルボニル基(>C=O)、チオカルボニル基(>S=O)などがあります。

色の深みや濃淡など色調を微妙に変えたり、染料分子を水に可溶にしたり、酸性・アルカリ性にしたり、さらに繊維への染着性を持たせたりするための原子団も染料には必要です。このような原子団を助色団と呼びます。 
助色団にはアミン基(-NH2)、メチルアミン基(-NHCH3)、ヒドロキシ基(-OH)、スルホン酸基(-SO3H)などがあります。 

染色工程について

長繊維の生地については、以下のような工程で染め上げます。

精練・リラックス→中間セット→染色→乾燥→仕上げセット

精練:アクリル糊剤・油などを除去する工程
精練の目的:糊剤残留による染色ムラなどの染色事故を防止するため

精練の豆知識①:アクリル糊剤は非水溶性のため、湯洗い程度では、とれないため、アルカリ剤を使って、水溶性に変化させる必要があります。
アルカリ剤には、界面活性剤や苛性ソーダがあり、コスト面から苛性ソーダを使用するのが一般的です。

精練の豆知識②:糊剤の除去を確認するために、酸性染料で染めたりします。酸性染料は、ポリエステルを染めず、アクリルのみを染めるからです。


ここからは、染色後に必要な処理について説明していきます。↓

還元洗浄とソーピングについてとその違い

生地の開発は、生地を染めて乾燥させたら終わりではありません。生地に付着した余分な染料を除く工程が必要です。その工程が、還元洗浄・ソーピング工程です。

還元洗浄とは?
ポリエステル繊維を分散染料にて染色後、繊維表面の余分な染料を還元分解することにより、堅牢度に影響を与える染料を除去することをいいます。

一般的には、染色終了後に排液し、アルカリ条件下で還元洗浄を実施します。
アルカリ条件での還元剤としては、ハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素などが使用されます。また、アルカリ還元洗浄後には、酸を使った中和工程が必要です。

ソーピングとは?
繊維表面に存在する余剰な染料の除去性だけでなく、除去した染料を浴中へ分散させ、繊維への再付着を防ぐことをいいます。

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