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映画『デリカテッセン/Delicatessen』(1991・フランス)
深度★★☆
大飢饉の時代、アパートの家主兼肉屋は、仲間の新聞屋に仕事の求人広告を載せてもらっていた。しかし実際にはそこの住人が見て見ぬふりをしている別の目的があった。 発想かなり可笑しい、初期の濃ゆい情感を帯びている。独特の暗く幻想的な雰囲気が落ち着く、ヨーロッパ的保守感とアナログ感漂わせほんわかしているようでかなりアバンギャルド、一見すると平凡な人たちに見えるのにみんなそうとう図太くてへんてこ。全てがバラバラになってしまう狂った世界で正気を保つためにはいつもの日常を続けるしかない。物事の中核を担う少数の大黒柱っているけれども、それを取り巻く多数の末端の者たちにもそれぞれ役割がありみんなが力を合わせると大きな推進力を生み出す。敵か味方かしかいない訳ではなく、誰でも両方の要素を持っている。同じ船のなか他人の事情がやたら気になるのは、相互に作用し合うぎりぎりで保たれているバランスなら少しの力で形勢は逆転し、人間の運命を変えるかもしれないから。その瞬間はいつで何がきっかけとなるのか、知られていない地下組織は存在するのか、隣人の心の中の振り子はどう揺れ動くのか、などは分からないけれど。暗黒時代をユーモアで乗り切り、退廃の中で夢見る者は、お伽噺の絵画のように綺麗な景色に歓迎されるはず。長い歴史の中で日々をそのように過ごしたい。
監督:ジャン⁼ピエール・ジュネ マルク・キャロ