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映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ/Natural Born Killers』(1994・アメリカ)

深度★★★ 

 ある日、親に日頃虐待を受けている娘が暮らす家に、肉屋の宅配で一人の男がやって来る。その出会いをきっかけに、ミッキーとマロリーは社会に対する復讐の殺人鬼へと変身し、車での逃避行の旅が始まる。 めちゃめちゃハマる特別な映画の一本。社会風刺に富んだコメディタッチに描かれているのだが、とにかく勢いよし、かっこいい映像と音楽、一番はやっぱりジュリエット・ルイスが輝いている所。彼女の野性むきだしの感情表現、斬新なファッションと取って付けたようなストーリーの組み合わせは、意外に味わい深さがあり、時を経ていくら背景は古くなろうともその感性が色褪せることはない。平気で、生気を感じないさもしいニヒリスト達を殺す様は、解放感や躍動感を生み、逆説的に生命や純愛に対する肯定へと導かれる。個人的にはオリバー・ストーン監督の最高傑作。 助けてくれた偏見を持たないインディアンを誤って殺してしまったのは、眠っていた無垢だった幼いの頃の体験を引き出されてしまったからではないか。蠍や蛇よりも強烈な毒に犯された。取り憑かれた悪魔からは誰にも逃れる術はない。 アメリカの乾いた空気を晒す広大な原風景とめまぐるしく脳裏をよぎるシュールな潜在意識、迷い込む時空を超えた異次元、金と名声では抑えつけられることのない衝動、めぼしい個性、みんな大暴れできる満ち足りし一時が来るのを内心静かに待ちか構えているのだろう。何人死のうがどうせ簡単に補える、ついてこれない凡人にはこんな自由は勿体ないからせめて殺され役で有意義に使ってやろうというぐらい器のでっかいヒーローの登場を。 アメ車とジーパンとロングブーツにカウボーイハット、蛇のリング、ジュークボックスとキーライムパイ、銃、麻薬、ファ××、ド派手な暴力打ち上げ花火に見とれながら、ガラガラヘビ、インディアン、拘束具と凶悪犯、軽いジョーク、自分の本能には蓋をして他人の事に死んでもつきまとい続けるクソみたいなテレビを消して、閑散とした荒野で、それらが二人を結びつけているように。  


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