#ネタバレ 映画「ママ、ごはんまだ?」
「ママ、ごはんまだ?」
2016年作品
おふくろの味、その重み
2017/2/24 15:02 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
子どもの頃に書いた絵や作文。
買ってもらったおもちゃ。
それに本や雑誌、
LPレコードなど。
ほとんどすべて手放してしまいました。前半は無自覚に、後半は断捨離で。
でも、それらが「私の歴史」であることにもっと早く気づいていれば、きっと多くを手放さなかった事でしょう。
もう味わえない「おふくろの味」もそうです。
文化であり、歴史であり、アイデンティティーでした。
映画「ママ、ごはんまだ? 」では、台湾人の父と日本人の母の間に生まれた歌手・一青窈さん姉妹が、「おふくろの味」で、「台湾のアイデンティティーと日台友好」を再確認していく様子をしみじみと描いています。
母が日本人なのに!?と思われるかもしれませんが、お母さんは結婚当時、一時期台湾で暮らしたので、台湾料理の修行ができたのです。そして日本へ帰国してからも、子どもが欲する台湾料理を作り続けました。
どうってことの無い日常のドラマなのですが、母の存在感というか、豚足(料理)のそれと言うか、重みがあって、古酒のような味わいのある作品になっています。
私は昔から歌手・一青窈さんのファンで、DVDも持っていたくらい。映画のエンディングテーマ「空音」もしみじみと良い歌でした。
★★★☆
追記 ( 教育、その重み )
2017/2/24 18:04 by さくらんぼ
>母が日本人なのに!?と思われるかもしれませんが、お母さんは結婚当時、一時期台湾で暮らしたので、台湾料理の修行ができたのです。そして日本へ帰国してからも、子どもが欲する台湾料理を作り続けました。
台湾の日本統治時代は50年間あるのです。生まれたときから日本人だとして教育され、おじさんになった頃に突然終戦になって「今日からお前たちは台湾人だ!」と言われても…。
理性では分かっていても「ならば、俺の中の日本人をどう葬ったらいいのだ…」と困惑する人も多かったのではないでしょうか。
一青窈さん姉妹の父はそんな台湾人。だから、酔っ払うと「俺は日本人だ!」が口癖のようでした。
彼が妻を見初めたのはホテルのフロント。
受付嬢だった妻に一目惚れし、「お願いがあります。その指輪を少しの間貸してください」と、唐突に、強引に頼むのです(婚約指輪だと勘違いし、結婚阻止のための決死の行動)。でも実際は、たしか兄の形見。
母は生粋の日本人ですが、結婚して台湾に嫁ぎ、必死で料理や言葉、風俗習慣を覚え、現地に溶け込もうと努力した結果、日本に帰国した後も台湾人のような食生活をするようになっていました。もちろん、育ち盛りの子供たちの食の好みが台湾料理であったせいもありますが。
何を言いたいのかというと、「教育次第で〇〇人というアイデンティティーも変化してしまう」ということです。これは、そんな映画でもあります。
追記Ⅱ ( 河合美智子さん )
2017/2/24 18:15 by さくらんぼ
この映画で母役を演じた河合美智子さんは、存在感があります。失礼ながら、けっして美女を演じていたわけではないのですが、彼女がいなければこの映画の厚みの半分は消えていたでしょう。母は強しです。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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