
ネタバレ 映画「パッセンジャー」
「パッセンジャー」
2016年作品
究極の風俗か
2020/6/13 10:39 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
宇宙の闇と静寂、そして音もなく突き進む無機質な宇宙船。
「工場萌え」、「廃墟萌え」という言葉があるなら、「宇宙萌え」という言葉もあって良いと思います。
そんな気持ちを満足させてくれる一本でした。
さらに、あの宇宙船の造形美、内も外もアートですね。しかし寒々としている。食傷気味になるぐらい寒い。
でも、そんな平和を壊すと言っては失礼ですが、焦点が当たる女性の存在。女性がいなければ寂しいし、いればいたで、もめ事の種になりそう。女性というものは、男にとって煩悩の一つだという事が、改めて分かる一本でもありました。
TVで観たので、(CM挿入の為か)終わりが唐突に切れており、煩悩以上に無残ではありましたが。
★★★★
追記 ( 究極の風俗か )
2020/6/13 10:54 by さくらんぼ
隕石事故の為、たった一人目覚めてしまった主人公・ジムが、仲間を求めて船内を歩き疲れ、やっと見つけたアンドロイドのバーテンダーに心情を吐露するシーン。
しかし、人間の男心は、アンドロイドの男には以心伝心では伝わらないのです。
でも、私はあのバーテン好きですね。
もし誰も人間がいなくても、あのバーテンがいてくれたら、それだけでも耐えられそうな気もします。リアルでもロボットのペットが活躍していますしね。
でも、もし女性のアンドロイドがいてくれたら、もっと良いですが。
しかし、当然と言えば、当然かもしれませんが、一方的に一番好みの人間の女性を指名したジムは、少しエグイですね。
追記Ⅱ ( 四葉のクローバー )
2020/6/13 15:34 by さくらんぼ
それはともかく、
もしかしたら、あの美しい「らせん状」の宇宙船は、DNAの記号なのかもしれません。
その宇宙船が隕石(刺激)にぶつかり、故障してジムが目覚めるのです。
そして、ジムが(悪さ)をして、ヒロインを目覚めさせます(細胞分裂)。
二人には子供がいなさそうですから、寿命が来て死に絶えました(それ以上増殖できなかった)。
つまり彼らは、DNAが傷ついて生まれた二つぶのガン細胞だった可能性があります。
だから、船内(人体)では少数派なのです。
途中でクルーが一人だけ目覚めます。
まもなくそのクルーは全身に病をもって余命いくばくもないことが語られます。彼は全身にガンが転移していたのかもしれません。彼は(主人公たちの境遇の)説明役として登場した可能性もあります。
映画ではありませんが、「四葉のクローバーはなぜ生まれるの」という問い。
私の知識では、人間の足で踏まれたりしてDNAが傷つき、本来三つ葉だったのが、奇形として四葉になったというものです。
そういう意味では主人公たちも四葉のクローバーだったのかもしれませんね。
不幸と幸運を内包した。
追記Ⅲ ( 映画「シン・ゴジラ」と、SF小説「冷たい方程式」 )
2020/6/16 14:19 by さくらんぼ
のネタバレにも触れています。
>映画の前半、まだ変態前のゴジラが初上陸したとき、自衛隊が攻撃に向かいましたが、攻撃直前に人を背負って逃げる住民を見つけました。
>それを知った内閣総理大臣・大河内 清次(大杉漣さん)は「人命を犠牲にするわけにはいかん」と言って、二人の住民のために攻撃中止命令を出したのです。
>攻撃のチャンスを失った直後、ゴジラは変態して成獣になりました。二人の住民のためにパワーアップを許してしまったのです。
>そして映画のクライマックス。
>ゴジラとの最終バトルの直前、「まだ避難が完了していません」との連絡を受けた内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己さん)は、「この機を逃したらチャンスはありません」と、躊躇なく攻撃命令を出したのです。
( 映画「シン・ゴジラ」追記36より )
映画「パッセンジャー」の微妙な味わいからは、名作SF小説「冷たい方程式」を連想しました。小説をほとんど読まない私ですが、若いころに評判を聞いて覗いた作品で、忘れられません。
「冷たい方程式」の微妙な味わいの、その遠景には既視感のようなものがあったのですが、改めて思い出してその正体が分かったような気がします。
それは映画「シン・ゴジラ」の中にも在りました。
映画「シン・ゴジラ」のクライマックスで、「まだ避難が完了していません」との連絡を受けた内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己さん)は、「この機を逃したらチャンスはありません」と、躊躇なく攻撃命令を出したのです。
住民が亡くなる可能性が大きいことを承知でです。
内閣官房副長官でなくとも、地方の無名の役人であっても、あるいは今年就職したばかりの新人でも、役人というものは住民の要望と法律の板挟みになって働くものです。
住民の心情を理解しつつも、高い視点から見た秩序の維持にために、NOを言わなければならないことも少なくないのです。
その時の役人の心情は、「冷たい方程式」に出てくる宇宙船の船長と似ているのではないかと、ふと思ったのです。
しかし、同じく他人の運命を変えてしまっても、映画「パッセンジャー」の主人公・ジムは、公(おおやけ)の幸せのために犠牲を強いたのではなく、自己愛のために行ったのです。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)