#ネタバレ 映画「スノー・ロワイヤル」
「スノー・ロワイヤル」
2019年作品
除雪車はほとんど暴れません
2019/6/26 22:49 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
映画「007ゴールデンアイ」にある、戦車とクルマのチェイスみたいな派手なアクションを期待していきましたが(チラシを見るとそう思えますが)、除雪車が暴れるシーンはほとんどありませんでした。
全編、どこに出もありそうなギャングの抗争劇です。わりと地味目な。
そもそも、あの除雪車はなぜ登場したのでしょう。
何かの記号としての価値はあるのでしょうが、除雪車など無く、主人公が定年退職した地味な隠居男であっても、あまり問題なく成立するお話だったように思います。
★★★
追記 ( 情報 )
2019/6/28 6:09 by さくらんぼ
印象に残ったエピソードがありました。
殺し屋が出てきます。
マフィアに息子を殺された主人公が、復讐のために知人の紹介で雇ったのです。
主人公は知人の言う通り、代金の半額を前払いしました。すると殺し屋は「お前はサツか!」と銃を向けるのです。「サツは情報が古いから分かる。今の相場は2/3だ!」と言って。
ここら辺りは腑に落ちます。例えば行政問題でも、日常的に国と連絡を取り合っている市町村役場と、本屋さんで買った参考書で勉強しているだけの人では、情報の鮮度が違ってくる事があるのです。
もう一つあります。
その殺し屋が、敵であるマフィアのボスのところに行き、「○○がお前を殺そうとしている。○○の名前を教えて欲しければ金を出せ」と言い、まんまと両方から金をせしめるのです。
しかし、マフィアは嗤いながら言いました。
「お前に仁義はないのか」、「そんな奴と、俺は組むことは出来ない」と。
その情報を知らなかった殺し屋は、マフィアに殺されました。
追記Ⅱ ( バッハ的なシナリオか )
2019/6/30 16:03 by さくらんぼ
息子をマフィアに殺された主人公が、復讐目的で誘拐したマフィアのボスの息子(小学生ぐらい)は、ボスとは違って上品な良い子でした。
しかも音楽を聴かせたら「クラシックが良い」と言い(他の人のシーンでも、選曲にこだわっていたので、これは重要なキーである可能性があります。)、さっそく聴かせたら「バッハだ、数学的に心地よい」などと感想を言うのです。
これは直感ですが、この映画「スノー・ロワイヤル」の戦いは、ビリヤードボールのように、一定の法則に従って転がる、数学的な美を描いていた可能性があります。
除雪車もその文脈で見る必要があるのかもしれません。
そうすると、パラグライダーが除雪車に飛びこんでくるラストシーンは、ビリヤードみたいで腑に落ちるのです。
追記Ⅲ ( カタログデータの楽しみ )
2019/6/30 18:21 by さくらんぼ
すると、この映画「スノー・ロワイヤル」は、映画「007ゴールデンアイ」ではなく、映画「博士の愛した数式」に近いのかもしれません。
ちなみに、主人公が誘拐したマフィアのボスの息子は、夜「寝ろ」と言うと、「本を読んで」と主人公にねだるのです。家には本が無いので、しかたなく除雪車のカタログを読んで聴かせる主人公。
排気量、馬力、最高速度、雪を飛ばせる距離など、無機質なカタログデータを喜んで聴く息子。
あれも、数字という事で、バッハに繋がっていたのでしょう。
ちなみに除雪係は雪が降ると遅滞なく除雪に励みましたから、それも規則性が有りますし、除雪車の先頭についた除雪板は1/2に雪を分離するから、それも数式ですね。
もちろん、報復合戦の「エネルギー不変の法則」は、言うまでもないでしょう。
追記Ⅳ ( 仁義とは秩序である )
2019/6/30 22:12 by さくらんぼ
追記 ( 情報 )に書いたエピソードもそうですね。
「仁義が無い」=「数学的秩序が感じられない」という事なのでしょう。
だから、殺し屋はマフィアに排除されたのです。
追記Ⅴ ( 雪景色の数値 )
2019/6/30 22:17 by さくらんぼ
すると背景は、
ごちゃごちゃ色よりも、
雪景色の「白」が良いのでしょうか。
「白」=「0」のつもりかもしれません。
追記Ⅵ ( 数学的・対称性・互角 )
2019/7/1 9:18 by さくらんぼ
私などディキシーランド・ジャズを連想してしまうのですが、バッハのCDを聴いていると、フレーズの直後に、それを一定の秩序にしたがって編曲したようなフレーズが、後追いのように出てきます。それが面白く、心地よいのですが、多分、その秩序を数学的と言うのでしょう。対称性とも呼ぶようです。
その対称性と言えば、除雪車の除雪板には対称性がありますね。
そして、劇中では、マフィアに息子を殺された主人公は、マフィアのボスの息子を誘拐しました。
そのゴタゴタの途中で、原住民のボスの息子も、マフィアに殺されてしまったのです。
トラブルの拡大を防ぎたいマフィアは、原住民のボスとは手打ちにしたいと思い、部下を一人差し出しましたが、原住民のボスは、「息子には息子だ」と言って交渉決裂します。
これらも対称性ですね。
そう言えば、映画「空母いぶき」でも、敵味方の被害を互角にすることが(あえて優位に立たないことが)、戦闘を拡大しないための定石とされていましたね。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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