#ネタバレ 映画「完全なるチェックメイト」
「完全なるチェックメイト」
2015年作品
ドローという人生の知恵
2016/1/2 9:25 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
昔のTVに、夏木陽介さんの主演で「青春とはなんだ」がありました。これは学園ドラマの走りで、不良少年たちをラグビーで更生させる感動作でした。
私はそれが大好きで、よく観ていました。不良少年たちは優等生たちよりもある意味“純”であり、試合に負けるとよく泣いていたように思います。でも当時の私は、あれをドラマの演出みたいな目で観ていました。
ところが現代でも日曜日にスポーツセンターへ行くと、ときどき試合があり、善男善女が(不良ではありませんよ)、廊下の隅っこや、体育館の裏手で泣いているのを見ることがあります。
そんな側には必ずと言ってよいほど慰める友の姿もありました。みんな本当に一所懸命にやっているのですね。あの涙を見ると、がんばった経験のない自分が恥ずかしくなり、残念で、ちょっぴり寂しく、私は足早に立ち去るのでした。
ところで、映画「カーズ」では「試合に負けて、勝負に勝つ」みたいな世界を謳っていました。優勝者はもちろん素晴らしいですが、場合によっては優勝しなくても称賛に値するプレイがあるのを教えられた映画です。
ならば映画「完全なるチェックメイト」は「ドローという人生の知恵」を教えてくれたのかもしれませんね。ラストで主人公のフィッシャーが勝ったとき、対戦相手のスパスキーが感服した様子で、スマイルを持ってスタンディングオベーションをしました。あそこに感動が集約されていたように思います。
スパスキーのしたことは、ゆとりある大人の対応です。彼は試合に負けはしましたが、人によってはスパスキーの人柄に感服しファンになったかもしれません。試合に負けはしましたが、傷跡を最小化することに成功したのです。
そんなスパスキーに比べ、主人公・フィッシャーは勝つことだけに特化した生き方をしていました。だから負けたらもちろんのこと、勝っても痛々しい。試合に限らず人生全般も痛々しい。
これはチェスの映画では無かったのかもしれません。チェスに限らず、どんな舞台でも、勝ち方、負け方は、美学のひとつですね。もっと言うと処世訓であり政治なのかもしれません。
そう言えば、今日観た寅さん映画でも、武田鉄矢さんふんする振られ青年に対して、似た者どうしの寅さんは振られ方の美学を語っていました。
★★★
追記 ( ドローという人生の知恵 )
2018/9/1 15:43 by さくらんぼ
先日…詳しいことは忘れてしまいましたが、イギリスだったか、どこかの国では、チェスに限らず、「勝つことより、ドローの方が上等だとされている」とか、聞きました。
真偽のほどは知りませんが、その国の文化をもっと知りたい気分になります。
追記Ⅱ ( 映画「空母いぶき」 )
2019/6/6 22:32 by さくらんぼ
この作品は、映画「空母いぶき」の理解にも役立ちました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)