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#ネタバレ 映画「リアル・スティール」

「リアル・スティール」
2011年作品
リングという箱庭療法
2011/12/16 10:45 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

チャーリー(父)とマックス(息子)は倉庫に侵入し、部品探し(探し物のスタート)をしました。そこでマックスは深い穴(マックスの深層心理)に落ちます。マックスが引っかかったのは、捨てられ、忘れられていたATOM(マックスのインナーチャイルド)でした。

つまり、マックスはチャーリーに再会したことで自分自身の心深くに疼く傷を見つけたのです。父親から見捨てられ、父の愛を知らない孤独な幼児期の自分自身の心に再会したのです。ATOMとの「僕がわかるの?」「2人の秘密だよ」とのセリフがありました。これがキーです。ATOMとはマックス自身なのでしょう。

私は専門家ではありませんが、ATOMを、つまり傷ついたインナーチャイルドを再生するためには、その当時にやり残したことを探し、心の中だけでも、やり遂げる事が必要だとされているようです。

映画では、まずは少年になったマックスが幼児期のATOMを養育します。普通は大人になってから行なうことなのですが、マックスはまだ大人ではないので、途中からチャーリーにATOMの養育をバトンタッチしました。親の行いを見て同じように真似るATOMは、まるで赤ちゃんの様でしたね。

映画「リアル・スティール」は親子で協力してマックスの心を癒やす映画でした。同時にチャーリーも自信を取りもどしました。やり残したことをやり遂げたラストには、さらに親子関係の修復という果実も待っていました。その重み比べれば試合の勝敗など軽いものです。この映画「リアル・スティール」は、そんな映画だと思います。CGも音もリアルで凄いです。主題も完成度も高いのですが、なぜか二人のキャラには感情移入できず残念でした。

余談ですが上映中に映画館が地震でゆれました。重低音、大音量でシートがビリついているのかと一瞬錯覚しましたが、そうではありませんでした。思い起こせば3.11の時も映画館で地震に遭遇しました。あの時・・・あんなことになっているとは自宅に帰るまで知りませんでした。それにしても二度も映画館で地震に遭遇するとは・・・3.11への鎮魂と、そして三度めは無いことを祈りたいと思います。

★★★★

追記 ( 宇宙戦艦ヤマト ) 
2012/1/10 13:39 by さくらんぼ

戦艦大和は「おじさん世代のトラウマである」という意味の話しを、どこかで読んだことがあります。つまり、日本の命運をかけて建造された巨大戦艦大和(もはや戦闘機の時代になっていたにせよ)が、十分な戦果をあげられないまま撃沈されてしまったことを、今でもおじさんたち(当時の少年たち)の多くが、心の奥底で無念に思っているという話です。

宇宙戦艦ヤマトの映画チラシの中には、朽ちた戦艦大和が土(干上がった海底)に半分埋もれている印象的な絵が書かれているものがありますが、あれがトラウマの記号的絵画なのでしょう。

あの朽ちた戦艦大和と、後ろに昇り来る太陽の絵。これを見たら、尋常な気持ちではいられない人たちが、べつに軍国主義者でなくとも日本人にはたくさんいるような気がします。もしかしたら、このトラウマは日本人の集合的無意識の様になり、おじさんたちだけでなく現代の若者の中にも広がっているのかもしれません。

映画「リアル・スティール」でも、少年マックスが土に埋もれていたATOM(インナーチャイルド・マックスの幼児期トラウマ)を掘り起こすシーンが出てきますが、それはヤマトとの意外な共通点でありました。

マックスは父・チャーリーの協力を得て、ATOMを通し、やり残したことをやり遂げて、自らのトラウマを癒していきます。さらに、子供の養育、それは同時に、父にとってもやり残した事だったので、やり遂げた時には、父にも父親としての、そしてボクサーとしての自信も回復してきました。

宇宙戦艦ヤマトでは、観客と、すべての登場人物のトラウマを、イスカンダルの女王・スターシャからの導きで、ヤマトを通して、遣り残したことをやり遂げて、癒やしていく映画だったのだと思います。

追記Ⅱ ( リアル・スティール ) 
2017/2/4 9:44 by さくらんぼ

>チャーリー(父)とマックス(息子)は倉庫に侵入し、部品探し(探し物のスタート)をしました。そこでマックスは深い穴(マックスの深層心理)に落ちます。マックスが引っかかったのは、捨てられ、忘れられていたATOM(マックスのインナーチャイルド)でした。(本文より)

「 『人が近づくと1分足らずで死に至る』格納容器、530シーベルトを計測

東京電力は2日、メルトダウン(炉心溶融)した福島第一原発2号機の原子炉格納容器内の放射線量が、推定で最大毎時530シーベルトに達すると明らかにした。

運転中の圧力容器内部に匹敵する線量で、人が近づくと1分足らずで死に至る。また、圧力容器直下の作業用の足場には1メートル四方の穴が開いていることも判明した。

東電は今月にも調査ロボットを投入する予定だったが、穴が走行ルート上にあるため、今後の調査は見通せなくなった。… 」

( ハフィントンポスト2017年02月04日 朝日新聞デジタル 投稿日: 2017年02月03日 08時36分 JST より抜粋 )

追記Ⅲ ( 「余分だからこそ存在理由がある」 ) 
2020/8/24 22:16 by さくらんぼ

どこかにも書いた話ですが、いつも私は映画の「深層にもぐり込みたい」と思っています。

そのためには「物語の裂け目」を探すのが近道です。

分かりやすく言うと、「無くても良い話」「とって付けたような話」など、普通はスルーしてしまうような「微かな違和感」があるエピソードを探すのです。

「余分だからこそ存在理由がある」はず。

それが物語の裂け目、「深層への入り口」なのです。

そこから入って(それを参考に)、同類の記号を他にも探せば主題が分かることがありますし、つなげれば解釈にもつながります。

我流ですから、「でたらめだ」と言われればそれまですが、何かのご参考になればと思い書いておきます。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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