
#ネタバレ 映画「バンクシーを盗んだ男」
「バンクシーを盗んだ男」
2018年作品
今そこにある壁の悩ましさ
2018/9/7 22:01 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
映画「判決、ふたつの希望」という裁判映画がありましたが、この映画「バンクシーを盗んだ男」の体験も、まるで裁判に参加しているようなものでした。
バンクシーと呼ばれる謎の人物が、ストリートの壁に絵を描くのですが、なまじ、それが芸術だったものだから、沢山の登場人物たちが、この絵をどうすべきかについて、熱心に持論を展開し始めるのです。
「トランプの壁」ではありませんが、そもそも、ここの住人が、壁に対してバイアスを持っている事も、この議論に影を落としているのでしょう。
いや、そのバイアスの悩ましさを、部外者の私たちに疑似体験させるために、絵を使ったのかもしれません。
バンクシ―並みに謎の映画でしたが、観てみると、意外と楽しめます。それは熱量の多い、人々の話のせいでしょう。
あなたなら、この絵をどうしますか。
★★★★
追記 ( どこまでが余白か )
2018/9/8 8:52 by さくらんぼ
「掛軸」などを見ると良く分かりますが、絵画には「余白」も大事な要素です。
では、壁に書かれたバンクシーの絵は、どこまでが余白なのでしょう。
多分、壁ごと切り取って絵を持ち去る者は、「余白」の事など考えてはいないでしょう。
彼らにどれほど絵心があるかどうかも疑問です。
ただ「軽くしたい」、その一心で最小限にカットしてしまうのでは。
彼らの建前は、「風化を防ぎ、アートを保存する必要性」」ですが、一部の人の、心のどこかには「商売」があるように思います。
彼らにとって壁画は、「大金が道路に落ちているようなもの」だから。
ここには、「保存の名目で、絵心のない者がアートを破壊している」可能性があるのかもしれない。
そうやって、どこか異国で展示されたバンクシーは、「余白の消えた掛軸」になっていました。
追記Ⅱ ( 市長の言葉 )
2018/9/8 9:03 by さくらんぼ
女性市長はバンクシーを「壁画のまま保存する派」です。
「この町の壁にあってこそバンクシー。その文脈が大切」だと、そんな意味の話をしておられました。
おそらく観光資源にもしたいのでしょう。自分の利益ではなく、「住民に公平に利益をもたらしたい」という、公務員魂も感じました。
そして、ここで言う「文脈」とは「歴史・政治状況」ですが、私は「余白という文脈」も加えたいと思います。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)