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#ネタバレ 映画「フォーン・ブース」

「フォーン・ブース」
2003年作品
交渉人
2003/11/24 11:34 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

映画の冒頭、電話一本、口八丁で稼ぐ主人公が描かれる。実は私は電話がきらいで、できれば出たくないといつも思っているのだが、その一方であのように自由自在に電話を使って仕事が出来たら素晴らしいとも思っている。電話のうまい人は憧れだった。

映画はフォーン・ブースへとたどり着く。そこで始まる主人公の恐怖。気がつくと舞台はほぼそこだけ、それで映画一本持たせてしまう。しかも緊迫感を維持したままで。それはそれは素晴らしいシナリオと演技である。

この映画のフォーン・ブースとはいったい何のつもりだろうか。私は教会の「懺悔の部屋」を思い出した。主人公はフォーン・ブースの中で、総てをお見通しの電話(神の代理人か)に向かっては嘘をつくことは許されないのだ。通話記録は残らないが(秘密は守られるが)。そうして電話の命令で総てを告白させられる。

警察側に交渉人が駆けつけても現場主任は彼を使わない。それはこの映画が会話技術の映画ではないからだ。嘘にまみれて生きてきた主人公に、フォーン・ブース「懺悔室」の中で課せられた義務は「真」を語る事である。

だから警官隊が突入する事を黙っていられずに、主人公が犯人に教えたシナリオもそんな理由からだろう。さらにフォーン・ブースに入ろうと一生懸命だったのが娼婦であった事も、そこが「懺悔室」であるなら理解できる。
これは会話というものについて、もう一度考えさせられる佳作である。

追記
2003/11/30 8:36 by 未登録ユーザさくらんぼ

電話という物は、ある意味、存在そのものが「ストレス発生機」なのだと思います。それに順番待ちで急かされるのも、ストレス増加につながりますし、電話で脅迫などされると、それは最高潮に達します。ですから舞台設定としてはとてもウマイですね。

ところで犯人がスチュを選んだ理由についてですが、私はピザ屋を心無いやり方で追い返したからだと思いました。犯人はあのフォーンブースの常連の仲から、盗聴によりお仕置きしたい人物を何人かリストアップして、次々にピザを送りつけたのだと思います。そして、ピザ屋への応対ぶりを見て、その最終決定をしたのではないでしょうか。

それから犯人が最後の最後まで姿を見せないのは、この映画が犯人追跡の映画でもないからだと思います。たぶん映画の焦点は「懺悔」にあるからです。それに、そのほうが怖さが増すのも理由かもしれません。

ところで、「懺悔」といえば「教会」となりますが、このような場合は「教会」を暗示するもの、例えば「ステンドグラス」などがそれとなく映画に出てくる事が多いのです。しかし、この作品の場合はそれが見つかりませんでしたが。

でも、似たものは有りました。フォーンブースのガラスにできた、ライフルの弾丸による円形のひび割れです。あれはステンドグラスのつもりではないでしょうか。そして届けられたピザは同じぐらいの円形で、トッピングにより普通はカラフルな色がついています。

ピザの受け取りを拒否し、ステンドグラスの完成を拒否したスチュは裁きの者の怒りを買ったともとれますね。ちょっとこじ付けの様な気もしていますが・・・。

いずれにしても、ピザ屋が自殺したのは彼を傷つけた自分の責任であり、さらにライフル犯は別に居た事も知ったスチュは、これから心を入れ替えるのは間違いなさそうです。

追記Ⅱ
2003/12/6 10:01 by 未登録ユーザさくらんぼ

正直なところ、私はなぜ犯人の部屋にピザ屋がいたのかわかりませんでした。

「犯人=神の代理人」としてのシナリオを考えてみます。犯人がハッキリと人を殺めた瞬間が描かれていたのは、バットで襲ってきた男からスチュを守ったときだけです。

それにラストでついに姿を現した犯人は白っぽい服装をして、白っぽいライフルケースを持っていました。現在公開中の別の映画でも神様は白い服を着て登場します。殺し屋が「黒」なら「白」は神のシンボルカラーの様です。

それに救急車のシーンでは、犯人はスチュを殺せたにもかかわらず、そうはしませんでした。もう、お仕置きは終了したからだと思いました。

話は戻りますが、映画の前半で、ピザ屋がピザの受け取りを拒否されたときの表情はとても深刻なものでした。ピザ屋にどんな悩みが有ったのかは知りませんが、あの瞬間自殺への引き金が引かれたのだと思いました。そして、このシーンはスチュの日頃の言動が他人にたいしてどのように影響をしていたかを象徴的に描いたものだったのかもしれません。

ところで犯人の部屋からピザ屋が見つかったことは、「スチュ・ピザ屋・犯人」の間にある、いわゆる「因縁」が表現されていたように思います。スチュにみせつける為にもです。そして犯人が神の代理人ならそのくらいのマジックは不思議ではないと思いました。

映画には色々な隠しメッセージの様なものがあります。それを見つけたと思ったとき、少し嬉しくなったりもします。ところで「ロボットのおもちゃ」が出てきましたが、あれにも何か意味がありそうですね。色々楽しめます。

追記Ⅲ
2003/12/13 8:05 by 未登録ユーザさくらんぼ

ところで、私はこの映画は「不思議の映画」だと思いました。見方によって「裁きの映画」の様でもあり、「変質者の映画」の様でもあります。

そして製作者の意図した事は、この作品を観た人に、忙しすぎる日常の中で、少しだけ「わが身を振り返らせる」事ではなかったかと思いました。

追記 Ⅳ( 津波予想6mの公衆電話はどこに置く ) 
2015/9/9 9:27 by さくらんぼ

ケータイの普及で、街角から公衆電話が消えつつありますが、そんな中、先日、大型家電店の一階フロアで、新規設置と思われる公衆電話を見つけました。

ボタンが500円硬貨ぐらいに大きくて、非常時、あわてたり、震える手(誰でもありえます)でも、また老人でも、手袋でも、押しやすそうな優れものです。さすが電気屋さん、感謝感激。でも、大きな看板を設置したり、チラシにも掲載したりして、もっと目立った方が良いですよ。

そして、その家電店にかぎらず、たいていの公衆電話がそうなのですが、路上とか、一階フロアに在るのですね。利便性を考えるとそうなるのでしょうが、ケータイがつながりにくくなるような、大規模災害時の通信手段確保を兼ねるのだとしたら、津波に弱い場所に設置するのはどうなのでしょうか。

東日本大震災後は、水没したらまずい発電機など、地面ではなく、高所に設置するようになりました。それと同じで、一考を要するのでは。

ちなみに、私の居住区では、津波は最大6mぐらいが予想されています。だから、公衆電話は最低でも3階に設置しないと水没するはずなのです。3階フロアーや、高所に駐車場設備を持っている店舗なら、簡単に移設できるのではないでしょうか。もちろん設置場所によっては、防犯ベルや、監視カメラなどで治安面のケアも必要です。

どうしても電話を切れないうちに、津波が来たら怖いですし。

(ネタ帳 6/10)

追記Ⅱ ( 意外なところから公衆電話の話へ ) 
2016/3/30 14:54 by さくらんぼ

最近、誘拐された少女が公衆電話で助けを求めた事件がありました。助かって良かった。

TVによると、それを受けて公衆電話の価値も見直されているようです。

と同時に、その少女が公衆電話を使うところを目撃していた人も多いらしく、「なんでケータイでなくて公衆電話なの?、と思って覚えていた」のだそうです。

公衆電話が見直されるのは歓迎ですが、公衆電話を使うことが、そんなに珍しい世の中になってしまったなんて…とケータイを持っていないオジサンはなげくのです。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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