#ネタバレ 映画「天国でまた会おう」
「天国でまた会おう」
2017年作品
人生は「落とし穴」に気をつけろ
2019/3/23 9:53 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
ちょっとエグイところも有りますが、それもあってこそ、このドラマの味でしょう。
映画「砂の器」がTVドラマなどでリメイクされ、病気が事故に差し替えられていたりしたこともありました。
病気の誤解や、差別の助長を防ぐという観点からは、致し方ないのかもしれませんが、芸術の味わいが変質してしまうことも、また事実だと思います。
面白い娯楽小説を読む楽しみは、この映画「天国でまた会おう」の様なものかもしれません。
★★★★
追記 ( 人生は「落とし穴」に気をつけろ )
2019/3/23 10:03 by さくらんぼ
映画の冒頭、伝書鳩みたいな働きをする軍用犬が、本部からの手紙を持って、最前線基地まで走っていくシーンが、ドローン撮影されています。
途中の荒野は、あちこち爆弾の穴だらけ。
犬は上手に穴を避けて、手紙を運びました。
あのシーンが象徴的に主題を語っていたように思います。
それから、主人公や戦友の傷口、それから鏡も一つの穴ですし、建物の階上から見れば、階下も。
追記Ⅱ ( もう一つの、映画「ランボー」 )
2019/3/24 10:03 by さくらんぼ
「 1918年、停戦を目前にした西部戦線。生き埋めにされた兵士アルベールを救ったエドゥアールは、その際に顔に重傷を負ってしまう。パリに帰還する彼らだったが、世間は帰還兵に冷たかった。」
( ぴあ映画生活「天国でまた会おう」あらすじ より抜粋 )
映画の冒頭は「終戦」直前の戦地です。本部からの「もう戦うな!」という知らせを、あの軍用犬が運んできところでした。
そこにいた主人公たちは、当然に「今死ぬのは無駄死にだ」と悟り、息をひそめていました。
しかし、隊長は部下二人を偵察に出し、あろうことか、隠れて後ろから射殺してしまったのです(敵に撃たれたことにして)。
その銃声を合図に、敵味方入り乱れての戦闘が始まり、多数の犠牲者が出てしまいました。
そのとき、主人公の一人が、もう一人を助けようとして、顎を吹き飛ばされる大怪我をしてしまうのです。
このエピソードがどのような意味を持つのかは、「あらすじ」にも書いてある「世間は帰還兵に冷たかった」で理解出来るような気がします。
隊長の取った狂気の行動は、実は、「帰還兵の悲哀を熟知しており、それよりも、部下といっしょに名誉の戦死者になろうとしていた」からなのかもしれません。
追記Ⅲ ( 繋がっていく哀しみ )
2019/3/24 10:26 by さくらんぼ
私が幼い頃、ときおり街で、(片脚が無かったり、片手が無かったりの)白い服を着た「傷痍軍人」の方々を見た記憶があります。彼らは時に音楽を鳴らし、募金を募っていたようです。
正直に申しますと、何も知らない子どもの目には、奇異な人たちに見えました。両親に「あれは何?」と尋ねると、「戦争でケガをした人…あまり見ないで…」と小声で言われ、足早に通り過ぎた記憶があります。
NHK朝ドラでもよく帰還兵が出てきますが、彼らは一様に苦労をしています。仮に五体満足であっても、メンタルに深いダメージを受けている人も。それでも、戦後生まれである私には、やはり実感としては、あまり理解が及ばないものでした。
しかし、この映画「天国でまた会おう」を観て、映画「ランボー」などを思いだすと、帰還兵の哀しみの片鱗が、伺えたような気もします。
追記Ⅳ ( 映画「あなたへ」 )
2019/3/26 10:23 by さくらんぼ
( 映画「あなたへ」のネタバレにもふれています。)
「 あるとき神様が、天使に、近々亡くなる予定のある受刑者のお迎えを命じました。すぐさま天子は降臨し、人間に姿を変えると洋子と名乗り、受刑者に近づいて、逝くまでの日々を慰めつづけました。
彼女は目的の受刑者一人だけを相手にしていればよかったのですが、道草に慰問の歌手としても活動しました。しかし、その歌声は指導技官として命令口調の仕事で長年生きてきた(ある意味、それが職業病になっていた)英二の心にも、乾いたスポンジについた水のごとく染み込んだのでした。」
( 映画「あなたへ」2012/9/30 16:18 by さくらんぼ より抜粋 )
映画「天国でまた会おう」に出てきた、顎を吹き飛ばされ、引きこもりになったエドゥアールの前に、突然現れ、傷口を見せてもまったく驚かず、それどころか、恋人のごとく彼に寄りそうようになった少女は、天使だったのかもしれません。
羽は見えませんでしたが、傷口を見ても平気ですし、彼女がかぶっているハンチング帽は、狩猟用の帽子でもあるからです。
彼女は天国からエドゥアールを連れに来たのです。
映画「あなたへ」の天使とおなじように、彼女は映画の冒頭で狂気の戦闘を始めた隊長と、ある意味同じ役目を負っていたのでした。
そして、映画のラスト近くに、エドゥアールは投身自殺を図るのです。
追記Ⅴ ( 靖国で… )
2019/3/26 16:20 by さくらんぼ
映画「天国でまた会おう」というタイトルは、
いわゆる「靖国で会おう」と、
同じ意味だったのかもしれません。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)