#ネタバレ 映画 「海難1890」
「海難1890」
これは誇りの映画
2015-12-10 08:18byさくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
時計を見たわけではないけれど、感覚的には132分の映画の100分ぐらいが、日本での海難事故のシーンのような気がしました。そして、その100分も野戦病院のように迫力がありました。
1890年当時、貧しい日本の、へき地の島で起こった大きな海難事故の顛末はどのようなものだったのか。映画を観ないと、それを想像することは困難でしょう。
そして映画の後半、32分がトルコの救援機の話になります。(失礼ながら)こちらになると観ているテンションが落ちます。普通は、映画のクライマックスになるとテンションが上がるものですが、これは逆なのです。まるで、映画の前半に全エネルギーを使い果たしてし、後半は惰性でしか動けないクルマのように。
いっそのこと、この映画は前半だけにして、後は「そしてトルコはこの恩返しを…で行った」みたいな後書きを入れるだけにした方が、尻尾までたっぷり詰まった鯛焼きになったのですが、そうもいきますまい。
そして、この映画の主題は「誇り」なのでしょう。さきほど「恩返し」という言葉を使いましたが、映画の後半、トルコのシーンでは、私の記憶している限り、一度も「恩返し」と言う言葉は出てきませんでした。
トルコ人たちは「恩返し」で日本人を救出したのではなく、自らの「誇り」で救出したのです。
恩が有る無しには関係なく。現実には「これで貸し借り無しね!」と思ったのかもしれませんが、映画としては「誇り」なのです。映画は現実をモチーフとしたアートですから。
そして、それでこそバランスが取れるというものです。映画の前半にある海難事故の救出劇は、誰に借りがあったわけではない島民たちが、己の「誇り」のために大活躍したのですから。
さらに、この話はどこへ続くのかと言えば、いわゆる宗教戦争の話にもなるのでしょう。映画の中に、仏教とイスラム教が仲良く並んでお葬式をするシーンが出てきましたから。
もしかしたら「誇り」で戦を終結できる方法があるのかもしれません。そんな夢も見させてもらいました。
★★★★
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?