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緊張型頭痛の治療

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はじめに

緊張型頭痛は、非拍動性の頭部の圧迫感や締め付け感を特徴とする頭痛であり、世界で最も多い神経疾患の一つとされています。頭痛の発生頻度によって、稀発反復性、頻発反復性、慢性の3つに分類され、頻度が高い場合には生活への支障が大きくなります。このように、緊張型頭痛は一般の人々の生活の質に影響を及ぼす可能性がある重要な疾患です。

症状と特徴

緊張型頭痛の主な症状は、非拍動性の頭部の圧迫感や締め付け感を特徴とします。痛みは脈打つような拍動性はなく、頭全体を締め付けられるような重苦しい感覚がみられます。時に頭の一部がズキズキと痛むこともありますが、突発的な刺すような痛みはほとんどありません。この頭痛の強さは軽度から中等度で、激しい痛みは伴いません。一般的に持続時間は数十分から数時間程度が多く、断続的に症状が出たり消えたりすることもあります。頭痛に伴い肩こりや首・肩の筋肉の痛みを感じることもありますが、悪心や嘔吐、光やにおいへの過敏性などの症状は伴いにくいです。また、身体活動や日常生活によって症状が増悪することはあまりありません。このように、緊張型頭痛は比較的軽度の非拍動性頭痛が主症状となり、持続的または断続的な圧迫感や締め付け感が特徴的です。

分類

緊張型頭痛は、頭痛の発生頻度によって以下の3つに分類されます。

(1) 稀発反復性緊張型頭痛
平均して1ヶ月に1回未満(年間12日未満)の頻度で頭痛が起こる場合がこれに該当します。比較的低頻度のため、生活への支障は小さく、医学的管理を必ずしも必要としない場合が多いです。

(2) 頻発反復性緊張型頭痛
1ヶ月に1回から14回(年間12日から180日未満)の範囲で頭痛が起こる頻度の場合です。中程度の頻度となるため、生活への影響が出てくる可能性があります。

(3) 慢性緊張型頭痛
1ヶ月に15回以上(年間180日以上)の高い頻度で頭痛が発生する場合がこれに該当します。頭痛が持続的または反復するため、日常生活に著しい支障をきたし、医学的管理が必要となります。


治療法

緊張型頭痛の治療は、急性期の対症療法と長期的な予防療法の2つのアプローチがあります。

急性期の治療では、一般的にアセトアミノフェンやイブプロフェン、ジクロフェナクなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択薬となります。これらの薬剤は頭痛発作時に服用し、速やかな症状改善を図ります。

一方、予防療法は頭痛の発生頻度が高い場合に適用されます。薬物療法では、三環系抗うつ薬のアミトリプチリン、四環系抗うつ薬のマプロチリンやミアンセリン、SNRI系のベンラファキシン、抗てんかん薬のトピラマートなどが使われます。これらは頭痛発作を未然に防ぐ目的で継続的に服用します。

また、非薬物療法としては、精神療法や行動療法、理学療法、鍼灸なども選択肢となります。エビデンスレベルは高くありませんが、副作用のリスクが低い利点があります。

治療法の選択は、頭痛の発生頻度や生活への支障度合いを考慮して行われます。発生頻度が低い稀発反復性の場合は急性期対応で対処できますが、頻発反復性や慢性の場合は予防療法の適用が検討されます。

発症メカニズム

緊張型頭痛の発症メカニズムには、遺伝的要因環境的要因の両方が関与していると考えられています。遺伝的要因に関しては、一卵性双生児を対象とした研究で、片頭痛が合併していない場合、4割以上の患者で遺伝的な影響があることが示唆されています。具体的な原因遺伝子は特定されていませんが、セロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター領域である5-HTTLPR遺伝子やカテコールO-メチル基転移酵素(COMT)の活性に関わるVal158Met COMT遺伝子多型との関連が報告されています。一方で、APOE-ε4遺伝子は緊張型頭痛に対して保護的に働くことも分かっています。

環境的要因としては、ストレスや睡眠障害、生活習慣の乱れなどが頭痛発症のリスクファクターとなります。長期間のストレスにより、筋や筋膜への過剰な緊張が生じ、それが頭痛の引き金になると考えられています。また、不規則な生活リズムや睡眠不足も頭痛発症に影響を与えるとされています。

さらに、神経伝達物質の異常も発症メカニズムに関与していると考えられています。筋や筋膜組織からの長期的な侵害刺激により、中脳水道周囲灰白質を中心とした下行性疼痛調節系の機能が低下します。その結果、脊髄後角や三叉神経脊髄路核などの二次侵害受容ニューロンの興奮性が亢進し、慢性的な疼痛につながると考えられています。また、diffuse noxious inhibitory controlsと呼ばれる痛みを抑制するメカニズムの機能障害も指摘されており、こうした変化が全身の痛覚過敏にもつながると報告されています。

以上のように、緊張型頭痛の発症メカニズムには、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合い、さらに神経伝達物質の異常も関与していると考えられます。発症の予防や治療を行う上で、こうした背景を理解することが重要だと言えるでしょう。

まとめ

本論文では、緊張型頭痛の診断から治療、発症メカニズムに至るまで包括的に解説されました。緊張型頭痛は非拍動性の頭部の圧迫感や締め付け感を主症状とし、発生頻度により稀発反復性、頻発反復性、慢性の3つに分類されます。治療法としては、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの急性期対症療法と、抗うつ薬や抗てんかん薬などの予防的薬物療法、さらには非薬物療法も選択肢となります。発症メカニズムには遺伝的要因と環境的要因が複雑に関与しており、筋肉の持続的な収縮による末梢の感作と中枢性感作が痛みの慢性化につながるとされています。

今後は、発症メカニズムのより詳細な解明と、新規治療法の開発が課題となるでしょう。また、ストレス対策や生活習慣の改善など、予防的なアプローチの重要性も高まっています。緊張型頭痛は一般的な疾患ですが、適切な治療と自己管理により症状はコントロール可能です。患者自身による生活習慣の見直しと、医療機関との連携が重要となります。

質問と回答

  1. 緊張型頭痛とは何ですか?

    • 緊張型頭痛は、圧迫感または締め付け感を伴う非拍動性の頭痛であり、軽度から中等度の痛みが数十分から数時間続きます。世界で最も一般的な神経疾患の一つです。

  2. 緊張型頭痛の発生頻度による分類は?

    • 頭痛の頻度によって、稀発反復性緊張型頭痛(1ヵ月に1回未満)、頻発反復性緊張型頭痛(1ヵ月に1〜14回)、慢性緊張型頭痛(1ヵ月に15回以上の発生)に分類されます。

  3. 緊張型頭痛の遺伝的要因はありますか?

    • はい、遺伝的要因が報告されています。特にセロトニントランスポーター遺伝子やCOMT遺伝子多型が関連している可能性がありますが、原因遺伝子は特定されていません。

  4. 急性期治療にはどのような薬が推奨されますか?

    • 急性期治療には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨されます。必要に応じて筋弛緩薬を併用することもありますが、一部のガイドラインでは推奨されていません。

  5. 非薬物療法にはどのようなものがありますか?

    • 非薬物療法には、リラクセーション法、認知行動療法、物理療法、運動プログラム、マッサージ、鍼灸などが含まれます。これらはそれぞれエビデンスの確実性に差があります。

  6. 緊張型頭痛の誘因として考えられる生活習慣は?

    • 肥満、運動不足、喫煙、ストレス、睡眠不足、天候の変化、疲労、月経などが誘因として知られています。

  7. 患者が必要とする医学的管理の判断基準は?

    • 緊張型頭痛が低頻度であれば生活支障度は低く、医学的管理を必要としない場合が多いです。医学的管理が必要な患者は、発生頻度が高い場合や、症状が重い場合に診断されます。

  8. 緊張型頭痛の診断プロセスはどのようなものですか?

    • 他の疾患を除外した後、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づいて診断・分類を行います。頭痛日誌を用いて経時的に症状を把握することが望ましいです。

  9. 慢性緊張型頭痛はどのように医療的に管理されますか?

    • 慢性緊張型頭痛は、治療に難渋することがあり、特に薬物の使用過多による頭痛と併存する場合は、診断が困難になります。そのため、患者の臨床像を正確に把握することが重要です。

  10. 緊張型頭痛の予後不良因子にはどのようなものがありますか?

  • 発症時から慢性であること、他のタイプの頭痛(例えば片頭痛)の併存、未婚、睡眠障害の存在などが予後不良因子として報告されています。##

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