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慢性疼痛における血液中の脳由来神経栄養因子BDNFの役割


序論

慢性疼痛は、通常の治癒期間を超えて3か月以上持続する痛みの状態であり、中枢神経系の神経可塑性の変化と自然免疫系の変化が重要な役割を果たしています。特に、末梢神経の損傷に伴う中枢神経系のBDNF(脳由来神経栄養因子)の変動が、慢性疼痛の発症や持続に関与していると考えられています。BDNFは血液中にも漏出するため、血中BDNF濃度の変化が中枢神経系の状態を反映すると期待されており、慢性疼痛の新たな生物学的マーカーとしてBDNFに注目が集まっています。

本論文では、慢性疼痛におけるBDNFの役割について概説します。まず慢性疼痛の概要と問題点を説明し、次にBDNFの変動と慢性疼痛の関連、BDNFと自然免疫応答の関係、さらに心理社会的要因の影響について述べます。最後に、BDNFを慢性疼痛の新たな指標とする可能性や総合的な治療アプローチの必要性について考察します。


BDNFの変化と慢性疼痛の関連

BDNF(脳由来神経栄養因子)は、神経細胞の増殖、分化、樹状突起の伸長などに重要な役割を果たす神経栄養因子です。末梢神経が損傷されると、炎症期にBDNFが増加し、抗炎症期に低下するというメカニズムが知られています。この変化は、中枢神経系におけるBDNFの動きを反映すると考えられています。

慢性腰痛患者の臨床研究では、血中BDNF濃度が低下するほど痛み症状が増悪するという相関関係が示されています。これは、末梢神経損傷時のBDNF変動が中枢神経系の状態を反映し、慢性疼痛の新たな指標となる可能性があることを示唆しています。

しかし、実際には自然免疫の抗炎症反応の亢進によっても血中BDNF濃度が低下することが明らかになっています。つまり、BDNF濃度の変化には免疫状態など他の要因も関与しているため、慢性疼痛の評価にはそれらの要因も考慮する必要があります。特に、血液細胞におけるBDNF遺伝子のエピジェネティックな変化が、BDNF産生の低下と関連していることが見出されています。このように、慢性疼痛患者の血中BDNF濃度は単独では指標とはなりえず、免疫状態などの他の生物学的変化との関係性を評価する必要があります。

BDNFと免疫応答

慢性疼痛においては、BDNF (脳由来神経栄養因子)と自然免疫反応の関係が重要であることが分かってきました。末梢神経損傷時は、炎症反応に伴ってBDNF濃度が増加し、その後の抗炎症期にBDNF濃度が低下するというメカニズムが知られています。BDNF濃度の変化は中枢神経系の状態を反映すると考えられているため、血中BDNF濃度の変動が慢性疼痛の指標となる可能性があります。

しかし、実際の臨床研究では、抗炎症反応が増強すると血液細胞のBDNF遺伝子の変化で血中BDNF濃度が低下し、BDNF値の低下と痛み症状の増悪が相関することが明らかになっています。つまり、BDNF濃度の変化には自然免疫状態などの他の要因も関与しており、単独では慢性疼痛の指標とはなり得ないことが問題点として指摘されています。

具体的には、TGF-β (transforming growth factor-beta)の増加に伴う自然免疫の抗炎症反応の亢進により、BDNF発現が抑制されて血中BDNF濃度が低下し、その結果として慢性的な痛みが増強されるメカニズムが考えられます。このように、BDNF濃度の変化と免疫状態の変化が密接に関連していることが示唆されています。

そのため、慢性疼痛患者の血中BDNF濃度を評価する際は、免疫状態など他の生物学的指標との関連性を総合的に検討する必要があるといえます。BDNF濃度の変化だけでなく、自然免疫反応の状態を把握することで、慢性疼痛の病態をより正確に理解できる可能性があります。

心理社会的要因の影響

慢性疼痛の発症と持続には、中枢神経系の神経可塑性の変化だけでなく、心理社会的要因も大きな影響を及ぼすことが知られています。特に、不安やうつ病などの心理的要因は、慢性疼痛の発症や悪化を引き起こす重要な要因です。これらの心理的問題は、疼痛の増悪を招く悪循環を引き起こします。

また、社会的孤立感も慢性疼痛の悪化に関与しています。適切な社会的サポートが得られないと、患者の孤独感が増大し、さらに疼痛が増強する悪循環に陥ります。家族や医療従事者による温かい支援が得られることで、患者の孤独感が和らぎ、疼痛の改善につながると期待されます。

したがって、慢性疼痛の治療には、生物学的アプローチに加えて、心理社会的アプローチも重要となります。患者の心理状態をケアし、社会的サポートを提供することで、慢性疼痛の管理が期待できると考えられます。特に、慢性疼痛患者の多くが不安やうつ状態を併発しており、これらの心理的問題に対する適切な介入が重要です。

このように、慢性疼痛の治療には、生物学的要因と心理社会的要因の両面からのアプローチが不可欠です。

結論

慢性疼痛の発症と持続には、中枢神経系の神経可塑性の変化と自然免疫反応の変化が関与していることが明らかになってきています。その中で、脳由来神経栄養因子(BDNF)は注目されている生物学的指標の一つです。

BDNF は末梢神経の損傷に伴う炎症反応の際に増加し、抗炎症期には低下するというメカニズムが知られており、その変動が中枢神経系の状態を反映すると考えられています. 実際の臨床研究では、慢性腰痛患者の血中BDNF濃度が低下するほど痛み症状が増悪することが明らかになっており、BDNFを慢性疼痛の新たな生物学的マーカーとして活用できる可能性があります.

ただし、抗炎症反応の増強によっても血中BDNF濃度が低下することが分かっており、BDNFの変化には免疫状態など他の要因も関与していることが問題点として指摘されています. そのため、慢性疼痛患者の血中BDNF濃度を評価する際は、免疫反応などの他の生物学的指標との関連性を総合的に検討する必要があります.

一方、慢性疼痛の発症と持続には、不安やうつ、社会的孤立感などの心理社会的要因も大きな影響を及ぼしていることが知られています. したがって、慢性疼痛の治療には、生物学的アプローチと心理社会的アプローチを組み合わせた総合的なアプローチが重要となります.

今後の課題としては、BDNF濃度の変化と免疫状態、心理社会的要因との関係性をさらに詳細に解明し、慢性疼痛の病態理解と効果的な治療法の開発につなげていくことが重要です.


質問 1: BDNFは慢性疼痛にどのように関連していますか?

慢性疼痛の発症には中枢神経系の神経可塑性が関与しており、BDNFはその一因です。特に、末梢神経が損傷された場合、BDNFは炎症誘発期には増加し、その後抗炎症期には減少します。これはBDNFが慢性疼痛のバイオマーカーとなる可能性があることを示しています.

質問 2: 血液中のBDNF濃度の変化はどのように痛み症状と関係しているのですか?

臨床研究では、慢性腰痛患者においてBDNF値の低下が痛み症状の増加と関連していることが明らかになりました。つまり、炎症反応が増加すると血中BDNF濃度が低下し、それが痛みの強度に影響を与える可能性があります.

質問 3: BDNFはどのようにして血液中に存在ロスをするのですか?

BDNFは中枢神経系から血液中に漏出します。中枢神経系のBDNFの変化は、血液中のBDNF濃度に反映されることが考えられています1


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