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陸上長距離の「強さ」は人種によらない
「日本人トップ」という表現
陸上競技を見ている方にはお馴染みだろうが、大会結果を報じる記事やニュースには「日本人トップ」とか「日本人一位」という表現が必ずといっていいほど使われる。
僕はこの表現を目にする度に違和感を覚えてきた。
だって選手や監督の多くが「オリンピックや世界陸上で活躍する」ことを目標とするなかで、日本人一位という非公式な順位には意味が無いからだ。
この表現には、「外国人に負けてもしょうがない」というニュアンスが透けて見える。
それはレース展開にも感じられるところで、日本国内の大会で実業団所属の外国人選手が早々に先頭集団を形成し、日本人選手たちはついていく素振りもないこともある。
しかし、ゴールタイムは必ずしも日本記録を大きく上回るものではなく、付いていくことが不可能とは思えない。
ここに世界との差があると思う。
「牽制」の概念が無いレース
国際大会を見る度に驚かされるのは外国勢の「積極性」である。
強い選手が我先にと先頭を取り合い、自己ベストを上回る高速ペースでレースが進んでいくことも多い。
マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲのように、レース中盤で早々に独走態勢を築いて走り切ってしまう選手も珍しくない。
それは、夏開催でコンディションの厳しい世界陸上でも 変わらず、PB(パーソナルベスト)や SB(シーズンベスト)が連発して本当に面白い。
日本人選手の多くはその波に乗ることができない。
レース後のコメントは「外国勢のペースアップについていけなかった」、「自分の力を発揮できなかった」というものが多い。
逆に言えば、日本人選手が100%の力を発揮し、PBや日本記録を更新すれば世界で上位に食い込むことも不可能ではない。東京五輪の女子1500で日本記録を出して入賞した田中希実選手や、同じくマラソンで入賞した大迫傑選手は証明している。
人種は一つの要素に過ぎないと思う。
海外転戦の必要性
田中、大迫の両選手は若くしてアジア大会やU20世界選手権を経験して、目指すべき「世界」のレベルを明確に設定し、誰よりも質の高い練習を行い、世界で上位に入るためにレースを転戦して「カイゼン」を続けている。
一方で、日本の実業団選手の多くは、箱根駅伝など国内大会での成果を重視しているように映る。記録会でも互いにけん制をしてスローペースになるレースがほとんどである。
陸上ファンとしてはやっぱり日本人選手が世界と勝負する姿が見たい。
そのためには「日本人トップ」ではなく、「世界トップ」を見据えてボーダレスな武者修行をしてほしい。牽制のないぶつかり合いのレースが見たい。
自分でやるわけでもないのに無責任極まりない願望だ。
でも、田中希実選手や大迫傑選手のような、ワクワクしかしない走りを僕は、いや陸上ファンはもっと見たいのである。
参考資料
・表題画像 田中が日本新で準決勝進出 陸上女子1500メートル - 産経ニュース (sankei.com)