【連載小説】雨がくれた時間 11.晴れていく迷い
前回の話はこちら 第10章『意外な素顔』
始めの話はこちら 第1章『思わぬ雨』
11 晴れていく迷い
「気は済んだか?」
ようやく笑いがおさまり息を整えている私へ、澤村がそう問いかける。
「うん。済んだ」
自分でも驚くほど弾んだ声はいつもよりかなり高くなっていたが、彼は気にした様子もなく「なら、いい」と静かに言った。ついさっきまで、すねた子供のように膨らませていた頬には、いつもの柔らかい笑みが戻っている。
「見ろよ」
彼はいきなりそう言って、すっかり雨雲