「怒り」を巡るあれこれ
こんにちは。
青山社中広報担当の佐藤です!
今回は少し遅くなってしまいましたが、
毎月配信している朝比奈一郎(あさひな いちろう)のメルマガに
記載した論考を掲載します。
ぜひご覧いただけると嬉しいです!
2019年8月号メルマガ論考
「『怒り』を巡るあれこれ」
8月3週目と4週目は、休暇と出張で約2週間もの間、東京を離れていた。
東京での日常は、朝の新聞読みにはじまり、昼間・夜と、常に携帯ニュース等に追われる生活だが、出張すると生活習慣が崩れ、新聞も読まず、ニュースに触れる機会も激減する。
そんな私だが、今回の東京不在時に、旅先で「やたら報道が多いな」と気になったのが常磐自動車道における宮崎容疑者のあおり運転・暴力行為のニュースだ。確かに、一歩間違えば死者が出かねない許しがたい事件だが、国際情勢や経済情勢が大きく揺れ動く中、そうしたニュースを差し置いてまで各メディアがこぞって連日報道し、多くの人がFacebookに関連の書き込みをするのが不思議でもあった。
宮崎容疑者の詳細は知らないが、きっと頭に血が上りやすい性質で、怒りの調整、流行りの言葉で言えば、いわゆるアンガーマネジメントが出来ない人間なのだと感じる。やはり徳川家康公の遺訓ではないが「怒りは敵と思え」ということが大切で、本事件を「他山の石」としなければ、と感じたのは私だけではないと思う。
確かにカッと怒って何かをしでかしてしまうのは一般的には良くないことだ。しかし、こうした宮崎容疑者のキレる行為に対して、多くの人が「怒り心頭に発した」のも事実で、これはいわば正義の怒りとして、世論をつくり上げ、ひいてはより安全な世の中をつくる。怒りに効用があるのもまた事実だ。
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東京に戻ってきてすぐに気になったのが、日米貿易交渉の大枠合意だ。トランプ大統領が前の首脳会談の際に「参院選挙後」の合意を示唆していたこともあって、急転直下感は全くなかったが、合意の中身には驚愕しても良いと感じた。というのも、トランプ政権成立前になるが、当初米国も加盟予定だったTPPの交渉時と比べ、乱暴に言って、日本が取れたものはあまりなく、ほぼ一方的に譲ったようにも見えるからだ。
TPP交渉時の水準にとどめたとはいえ、米国産牛肉や豚肉の日本の輸入関税は大幅に引き下げるにも関わらず、日本からの要求の目玉である日本製自動車の米国の輸入関税撤廃は見送られた(一応、正式には継続交渉)。
確かに、TPP交渉時よりも譲歩する農産品の対象が狭いことや、工業品の幅広い範囲で米国側の関税を撤廃する見込みであることを加味すれば、また、米中の貿易摩擦が激化していて多少の「漁夫の利」を得られる現下の情勢に鑑みれば「0対100」というほどではない。ただ、後述する事情を踏まえず、虚心坦懐にTPP交渉時と今回の合意だけを並べてみたら、日本の世論として、もう少し合意結果への「怒り」が出て来ても良さそうなものだ。
もちろん、そうした日本国民の「怒り」が出てこない最大の要因はトランプ大統領の「怒り」だ。TPP交渉時にはほぼ予想外だったトランプ氏が大統領に就任し、その後「怒り」を前面に出して、それまでは議論にもなっていなかった自動車への追加関税をほのめかす事態となっている。実際に中国製品には怒りに任せて追加関税を課している現状を踏まえれば、今回の交渉結果は上出来と言えよう。一言で言えば、トランプの「怒り」の勝利だ。
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こう見てくると、「アンガーマネジメントなんて手ぬるい」「やはり怒りには怒りをぶつけた方が勝ちだ」と、いう気分にもなる。実際に、日韓対立においては、互いに怒りの応酬となっている。世論を巻き込んでより大きく怒った方が「勝ち」(相手国への勝利と言うこともあるが、ここでは、政権維持に役立つという意味も含む)とばかりに、互いの政権や国民が怒りを煽っているフシすらある。
「良い怒り」「悪い怒り」という二分法が成立するわけではない。が、せめて、「怒り」を何かに役立てて、他者や社会の在り方を少しでもよくしよう、という気持ちと戦略がなければ、それは全て「悪い怒り」という気もしてくる。
良い政治家は、「私憤を公憤に変える人」とも言う。
怒りを「公」のために上手く使うことこそが、真のアンガーマネジメントかもしれない。
筆頭代表・CEO
朝比奈 一郎
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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