『チャイナ・ジョーカー」と言ってもいいぐらいにジアン・チンチンの母親役はキレていた
『西湖畔(せいこはん)に生きる』(2023年/中国/カラー/ビスタ/1h58)監督:グー・シャオガン 出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビン、ワン・ジアジア
前作『春江水暖 しゅんこうすいだん』を見ていたが全然内容を覚えてなかった。前作が巻一でこの映画が巻二ということで中国の山水画を映像化したような広大な中国の風景から近代化された中国の暗部に踏み込んでいく。アメリカの『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』はずっこけたが、これをジョーカーの続編にもしていいぐらいに母親役のジアン・チンチンの演技がキレていた。「チャイナ・ジョーカー」と言ってもいいぐらいに。
中国の経済自由化に伴う拝金主義のマルチ商法の映画なんだが、日本でもバブル期にはやったような。そう言えば友達の洗剤を買わないかと進められたり、精神セミナーであっちの世界に行ってしまったり、オウム真理教まがいのカルト商法は日本人にも馴染みがあると思う。中国での経済自由化でのそういうベンチャー企業があっても不思議はないと思うのだ。それはアメリカの『ジョーカー』を産んだ社会とも繋がっていく。
マルチ商法にハマっていく母親役のジアン・チンチンの変貌がすべてで、狂気と言っていい拝金主義者を演じている。さすがにそのままじゃまずいと思ったのかラストはファンタジーっぽく救いの映画にしているが、そこが中国映画っぽく教条主義的でつまらなくなっている。あのまま狂気の母親で良かったと思うというか、現実はあの母親のほうが今の中国ではリアルさを感じてしまう。元ネタが中国の仏教説話にある話で地獄に落ちた母親を息子が救うというファンタジーなんだが、息子はあの母親じゃ救えないと思う。ラストも姨捨山になるのかと思っていた。
ジアン・チンチンが最優秀主演女優を受賞したのもわかる演技だった。