変声期前に大人にさせられた少年
『ぜんぶ、ボクのせい』(2022/日本)監督:松本優作 出演:⽩⿃晴都/川島鈴遥/松本まりか/若葉竜也/仲野太賀/片岡礼子/オダギリジョー
解説/あらすじ
児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす優太。ある日偶然、母の居場所を知った優太は、施設を抜け出した。しかしそこにいたのは、同居する男に依存し、自堕落な生活を送っている母だった。絶望した優太は、当てもなく海辺を歩いていると、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本に出会う。2人はわずかな金銭を稼ぎながら、寝食を共にする。裕福な家庭に育つも、家にも学校にも居場所がない少女・詩織とも顔見知りになり、優太は彼女に惹かれていく――。
ストーリーは『ユリイカ』に似ているかな。思春期の親から見捨てられた子供が疑似家族を求める。ただ『ユリイカ』と決定的に違うのは無用なオジサンが社会に抹殺されてしまう。それは役所広司の多少モラルあるオジサンとオダギリジョーのモラルの欠片もないオジサンの違いでもあるかもしれないが、少年を受け入れる人がなく、少年院に行くしかなかった。
題名は少年にそう思わせさせる自己責任というやつで彼の場合、受け入れなくても良い社会を受け入れざる得なかった。それは社会にとって無用な存在が生きていけない社会。『ユリイカ』から二十年。もうそういう無用さを受け入れてくれる社会ではなくなったことの変遷を観る映画だ。彼らの行き場が反社会しかないのだ。
少年役をやった⽩⿃晴都はまだ変声期前で他人に意志を伝達するときの頼りなさがいい。不良少女Aの川島鈴遥「夢で逢えたら」を歌っているのだがフルコーラス聴きたかった。オダギリジョーの胡散臭いおっさん役も良かった。
脇役陣がいいメンバーを揃えている。もっと注目されてもいい作品。