『わたしの好きな季語』川上弘美
川上弘美の季語俳句集(選)とエッセイ。川上弘美のエッセイの面白さ。選ぶ季語もそれまでにないものが多い。「絵踏み」とか。「絵踏み」が季語になっているのは九州で正月に遊女を集めて絵踏みをする行事になったから。
芥川龍之介の句。
「傾城」は城を傾けるほどの美人、「蹠」は足の裏。この句だけで物語が広がっていくのは芥川ならではの句か。「絵踏み」なんてなかなか出て来ないと思うが、その季語からここまでの俳句を作ったのだろう。現在は「絵踏み」は季語から外されているという。
川上弘美自身の俳句。「春愁」と「秋思」という季語の違い。このへんは作家ならではの感性かな。「春愁」というとユーミンの「春よ、来い」を思い出す。「秋思」は岩崎宏美「思秋期」。流行歌からイメージされてしまうのは月並みだった。そう思うと川上弘美の斬新さがよくわかる。
元リケジョだけあって変な生き物好き。黴/こうもり/ががんぼ/蚯蚓/木耳(きくらげ)とか。蟷螂では寄生虫であるハリガネムシを発見した観察好きのエッセイ。世間から外れている。そういうところが魅力なのかもしれない。俳句の入門書にはない面白さはエッセイによるところが大きいと思う。
お気に入り十句。
今日のNHK俳句の兼題「磯遊び」から一句。