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勝ち続けても勝利感のないボクサー
『アウシュヴィッツのチャンピオン』(2020/ポーランド)監督マチェイ・バルチェフスキ 出演ピョートル・グウォヴァツキ/グジェゴシュ・マウェツキ/マルチン・ボサック/ピョートル・ヴィトコフスキ/ヤン・シドウォフスキ
解説/あらすじ
第2次世界大戦最中の 1940 年。アウシュヴィッツ強制収容所に移送される人々の中に、戦前のワルシャワで“テディ”の愛称で親しまれたボクシングチャンピオン、タデウシュ・ピトロシュコスキがいた。彼には「77 番」という“名”が与えられ、左腕には囚人番号の入れ墨が刻まれた。十分な寝床や食事を与えられることなく過酷な労働に従事させられていたある日、司令官たちの娯楽としてリングに立たされることに―。
アウシュヴィッツ映画としては、ポーランド映画の伝統なのか不条理観。最近の日本の映画の戦争ものはこういう映画が少ない。どこか感動映画にしてしまいがちだけど。救われるのはチャンピオンと呼ばれた男だけで、それも後のエピソードで連合軍に解放されジムを開いたと。彼が自力で切り開いた道でもないのだ。
なんとなく呆然としながらカタルシスは得ることはない。実際は勝利しているのに敗北感につかれるのは、それがナチスの敷地内で行われている娯楽であるということ。勝っても負けても、それが映画の中でいつまでも続くのだ。最近のお涙頂戴の日本の戦争映画とは正反対な感じがする。
仲間は無惨に殺されるしガス室のシーンも悲惨(直截描写はないのだが)。ただボクシング映画としては面白いかな。このチャンピオンが防御スタイルのボクサーだからハードパンチをかわすシーンがなんともスリリング。この役者は経験者かもしれない。