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あの頃はジャケットも芸術だった

『ヒプノシス レコードジャケットの美学』(2022年/イギリス/英語/101分/配給:ディスクユニオン)監督:アントン・コービン 出演:オーブリー・パウエル、ストーム・トーガソン(ヒプノシス)、ロジャー・ウォーターズ、デヴィッド・ギルモア、ニック・メイスン(ピンク・フロイド)、ジミー・ペイジ、ロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)、ポール・マッカートニー、ピーター・ガブリエル、グレアム・グールドマン(10cc)、ノエル・ギャラガー(oasis)他


アントン・コービン監督最新作にして、初の長編ドキュメンタリー作品
アートワークでロックを芸術に昇華した伝説のデザイン集団の物語

1968年、ストーム・トーガソンとオーブリー・“ポー”・パウエルが共同で創立したイギリスのデザイン・アート集団「ヒプノシス」は、ケンブリッジでピンク・フロイドのメンバーと出会い、ジャケットやツアーポスターの制作を開始。後にピーター・クリストファーソンが加わり、1970年代を中心に、ピンク・フロイド、ジェネシス、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニーら数々のアーティストのカバーアートを創作した。斬新・奇抜・洗練…あらゆる言葉が相応しいその独創的なデザインは、それまで宣伝用パッケージにすぎなかったアルバム・ジャケットを芸術の域に高めた。 本作では、ストームとオーブリーが語る制作秘話、ふたりを支えたカメラマンやグラフィックのスタッフ、レジェンドアーティストら本人による証言はもちろん、貴重なインタビューや写真・映像の数々が映し出される。 半世紀の時を超え、今なお音楽史に燦然と輝く彼らのジャケットデザインの真相に迫るドキュメンタリー。

映画の中で金持ちは本物の絵を飾るが貧乏人はレコードジャケットを飾るというのは、俺のことかと思うほど、レコードジャケットは好きだった。ジャケットでアルバムを買うこともあった(と言ってもジャズの話なんだが)。

ヒプノシスのジャケットはジャズを聴く前はプログレ好きだったからピンク・フロイドのアルバムとかは何枚か持っていた(牛さんのアルバムとか)。そういうレコードジャケットの制作会社の話なのだがピンク・フロイドが絡んでくると自然シド・バレットの話も出てきて、そこでうるっとなってしまう。「炎~あなたがここにいてほしい」で語り尽くされたエピソードなのだが。

ヒプノシスも性格の違う二人が出会って別れまでの話でシドの話がオーバーラップするように作られていた。「炎~あなたがここにいてほしい」のエピソードなのだが、家に帰ってアルバムを聞きたくなった。あの炎の男はスタントマンで実際に火を付けて写真を撮ったとか。

「アニマルズ」のジャケットで豚は実際に発電所で飛ばして写真を撮ろうとしたのだがワイヤーが切れて飛んでいってしまっとか(だからジャケットは合成写真)。


『アニマルズ』

その時々のエピソードが面白い。その度に音楽もかかるのでその頃のロック(プログレからハードロック)が好きな人にはたまらない映画だと思う(それで映画館も混んでいたのか)。ポール・マッカトニーの話でどこかで女神の銅像を買ったのでそれをアルプスで写真のジャケットにしたいとかでヘリコプターでスイスのアルプスまで行って撮った(あとであの白い山は塩でしょといわれた)とか。金がかかるジャケット作りは芸術家のこだわりがあったのだろう。その没写真を次のミュージシャン(ピーター・ガブリエルだった)がジャケットに使うということもあったとか。とにかく高いのでピーター・ガブリエルは最初使っただけで注文出来なかったとか。

そういうこだわりの職人技という良さがあった時代で、今だとコンピューターで手軽に作れるかもしれないが、あの頃はレコード・ジャケットも飾っておきたいぐらいにそれも音楽の一部だった。もっともCDになり配信になってもうそういう趣味は限られた人だけのものになったが。


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