偽りの邦題映画大賞だな
『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973/アメリカ)監督サム・ペキンパー 主演ジェームズ・コバーン/ クリス・クリストファーソン/ ジェイソン・ロバーズ/ ジャック・イーラム/リチャード・ジャッケル/ ケティ・フラド/ ボブ・ディラン
NHKBS「ダークサイドミステリー ビリー・ザ・キッド伝説」をみて観たくなった。
「ビリー・ザ・キッド」は1930年代に映画化されてから西部劇でヒーローとなり、もっとも演じれれたキャラクターだという。サム・ペキンパーの映画はベトナム戦争後の反権力・アウトローのビリー・ザ・キッドが再び注目されて作られたということだ。この映画でもっとも注目すべきは音楽と共に出演もしているボブ・ディランだろうか。彼の音楽が良かった。
ビリー・ザ・キッド役のクリス・クリストファーソンよりも、ビリーを殺す保安官役のジェームズ・コバーンの方が目立っている。保安官はビリーの敵というよりライバル的存在で、好敵手というビリーとの間に友情のような感情も芽生えてくる。それは、ビリーが保安官も魅了するアウトローだったという監督の演出だろうか?
最初に「ビリー・ザ・キッド」の映画を作られた時には原作と違い、アメリカではビリーが逃亡するハッピエンドで終わったとか。それは試写の段階で客からブーイングが起きたので最初のアメリカ映画ではラストが違うという。ヨーロッパ版は原作通りということだが。それだけビリー・ザ・キッドはアメリカで人気があるのである。
それはビリーはアイランド移民の子孫であり開拓時代はメキシコで地元民に愛されていた。その新聞記事が死後にインタビューや聞き取りであきらかになり、ビリー・ザ・キッドの本が出版される。アウトローだけど権力者をやっつける義賊扱いされていたのだ。
そんな影響から書かれたのがマイケル・オンダーチェの『ビリー・ザ・キッド全仕事』。この本はサム・ペキンパーの映画を見る前に読んで感動を受けたものだった。
ペキンパーの映画はそれまでのヴァイオレンス映画に比べておとなしい感じがする。またビリー役のクリス・クリストファーソンがミスキャストっぽい。クリス・クリストファーソンはこの映画がきっかけで一時的に大スターになったが落ちぶれて、彼をモデルとした映画『アリー/ スター誕生』が作られたのだ。
圧倒的に魅力的なのはジェームズ・コバーンで保安官役なのがもったいない(ワイアット・アープをモデルとしているのかもしれない)。原作は『パット・ギャレット&ビリー・ザ・キッド』でジェームズ・コバーンの保安官が主役だったんだ。邦題が良くなかった。