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『アネット』は『テンペスト』だった
『アネット』(フランス/2020)監督レオス・カラックス 出演アダム・ドライバー・/マリオン・コティヤール/サイモン・ヘルバーク
スパークスというバンドはデヴィッド・バーンに似ている。そんな感じのロックテイストなミュージカルだがとにかく過剰だった。それはアダムズ・ドライバーの傲慢なスタンダップ・コメディアンで何をしても客が笑ってくれるという天狗になっている嫌な奴だった。アダムズ・ドライバーは最近こんな役ばっか。とにかくスパークスの音楽は非常にいい。
対するマリオン・コティヤールは悲劇の女王で、その2人のゴールデンカップル誕生と悲劇の物語。この対比は、ヘンリー(アダムズ・ドライバー)は自分中心世界(お山の大将)。観客も自分の世界に巻き込むというような、その関係が築かれなくなってくると観客からは飽きられる。アン(マリオン・コティヤール)は演劇の世界だから様々な人々との共同作業で成り立っている。特に歌劇やオペラの場合は、伴奏者は必要不可欠。その指揮者(サイモン・ヘルバーク)は愛人?的関係である・
ヘンリーがアンに一目惚れしてゴールデンカップル誕生である。だが2人が人気絶頂時には仲が良かった関係も、ヘンリーが落ち目になると格差カップルとなり2人の関係がギクシャクしてくる。それでも娘(アネット)が2人のかすがいだった。
難破船のシーンは、シェイクスピア『テンペスト(嵐)』を連想させた。まったく同じストーリーではないが、怪人キャリバンと妖精エアリエルの激しい嵐の船上ダンス。船は難破して、浜辺に打ち上げられるのは、ヘンリーとアネットだけだ。しかしアンは幽霊になって、復讐劇が始まる。
ここからはアン(母=幽霊=歌声)とアネット(娘)のヘンリー(父)に対する復讐劇になっていくのだが、この展開はシェイクスピア劇を踏まえているように思える。それほど突飛な話でもない。しかし、アネットが人形であるというアイデアが素晴らしいのだ。異次元世界のダーク・ファンタジー化していく。これは文楽などの人形芝居を彷彿とさせるほど神業的展開になっていく。そして、アネットが主役に踊り(歌い)出る。その声は母ゆずりのものだった。
最初は父親に搾取される子供タレントだった。しかし、父親が共同パートナーの指揮者を殺害した為に関係が崩れる。もうアネットは歌えなくなるのだ。ラスト・コンサートが組まれて、そして大観衆の前で父の罪を告発する。見事過ぎる復讐劇だ。
牢獄での父と娘の対面シーン。人形だったアーネットが少女に姿を変えてデュエットするシーンは、素晴らしい。
レオン・カラックスは昔から音楽的センスはあったよね。デヴィッド・ボウイの音楽を突然入れたり。過剰なミュージカル復讐劇。最後、ハッピーエンドな感じになるのは『テンペスト』と同じで役者が挨拶して終わる。オープニングは映画の楽屋ネタから始まりラストは映画(ミュージカル)の終わりのエンドロール。入れ子構造になっているのだ。メタ・ミュージカル映画と言ってもいい。