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ジョージア映画祭「放浪の画家ピロスマニ特集」

【ジョージア映画祭 SELECT】『ピロスマニ』(1969年/ジョージア)監督:ギオルギ・シェンゲラヤ 出演:アフタンディル・ヴァラジ、ダヴィト・アバシゼ、ズラブ・カピアニゼ

グルジアからジョージアに国名が変わったときは、アメリカの州かと思ってグルジアでいいのにと思ったがすっかり定着したのは、こういう映画祭のお陰なのかも。今はなき岩波ホールの置き土産だったのか。こういう文化的交流は大切なことであるのに、そういう映画館が無くなるというのも今の日本を象徴しているのか。

この映画が日本で公開されたのが岩波ホールで1978年でまだそうしたマイナーな国の映画があまり紹介されてない時期だっただけにあまり客は来なかっただろうな、と思うのだが、それから岩波ホールは『木靴の樹』や『旅芸人の記録』を公開させているのだから貴重な映画館になったわけだ。

一般にアート系と言われる作品で、ピロスマニはジョージアの放浪の画家で今で言うアウトサイダー・アートなのかもしれない。正規の美術教育を受けてないがその土地(ジョージア)に根ざした風習やら動物を描いた。ほんとに絵が好きで、ある時は酒場の絵を書いて飾ったり女優の絵を描いたり。そういう自由の中で描いていたのだが海外で有名になってしまいピカソやアラゴンなどに認められフランスで個展まで開くほどの作家だったが、その素朴なタッチとまだ伝統絵画から逸脱した画法なので国内では評価を得られなかった(死後に評価されるのだが)。
 そうした画家の伝記映画だが、後半は眠くなってしまった。

【ジョージア映画祭 SELECT】『ピロスマニのアラベスク』(1985年/ジョージア)監督:セルゲイ・パラジャーノフ

これはパラジャーノフがピロスマニのオマージュ的作品で、絵のモチーフを映像で表現するアート作品の短編映画。
これは面白かった。絵よりモデルがけっこう美人だったり鮮やかな色彩であったり、コーカサスの民族衣装はジョージアの華やかさを感じさせた。
 その中に犠牲の山羊の無垢なる白が登場してくるのだ。それはピロスマニの衣装でもあった。彼はそこでキリストの生まれ変わりとなるのだ。映画を通して。

【ジョージア映画祭 SELECT】『ピロスマニ・ドキュメンタリー』(1990/ジョージア)監督・脚本・ナレーション:ギオルギ・シェンゲラヤ

教育用ドキュメンタリーだが、この映画がピエスマニの生涯を知るには一番わかり易い。これを最初に観るべきだったな。ドキュメンタリーだけあって、彼の生涯を歴史と共に重ねている。シュールレアリストやピカソによる評価は第二次世界大戦前のコスモポリタンの夢の時期。そして戦争によって彼の作風も下らないものとされていくのだ。自由の気風は貶められて彼は貧しさの中で死んでゆく。彼が描いてきたジョージアの人々は、家族的な懐かしさを伴う民族主義だった。それは放浪する画家を受け入れる余地がある郷土というもの。戦争はそれを国家主義的なものへと破壊していく。ソ連邦で彼が受け入れられなかったのはそうした機能主義のような気がする。芸術は何かに役立つ必要があるとか。彼の画風を幼稚としてしまう風潮があったのだ。


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