ゾーイ・カザンはエリア・カザンの孫だった
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022/
アメリカ)監督マリア・シュラーダー 出演キャリー・マリガン/ゾーイ・カザン/パトリシア・クラークソン/アンドレ・ブラウアー/ジェニファー・イーリー/サマンサ・モートン
レイプ被害を受けた当事者の映画ではなく、それを取材して記事にした二人の女性記者の物語。暴露ものというよりも二人の女性記者のシスターフッドものというような映画。彼女らがヒロインとなるための戦うモチベーションは、子どもたちのためにというのがある。そういう意味では母が戦う家族映画かもと思えた。
アメリカ映画の見せ方の上手さなのか、もちろんハリウッド・スキャンダルを描いた映画ではあるのだが、それがメイン・ストーリーでもない。真実(事実)を明らかにしたいという女性記者のエンタメ映画として、二人の女性の違いを描いていたのが良かったのか?
キャリー・マリガン演じる女性記者は、以前からこの手の記事を追っているベテラン記者だと思うが以前は一人で追っていたために挫折があったのだと思う。そして、妊娠して出産することで、新たにこの手の事件に関わっていく力を得るのだ。それは、子供を出産したことに他ならないと思う。それが子供の未来のためという戦いになっていく。
その戦いのヒロインは、ゾーイ・カザン(祖父はエリア・カザンだった)なのだろう。彼女も娘がいる母親の記者だ。彼女を中心にハリウッドのスキャンダルを暴いていく。多くの被害者の女性が沈黙せざる得なかった状況の中で、乳癌の手術を受ける被害者が沈黙から立ち上がるのは、自分の人生の終わりに子どもたちに未来を明るい遺したいからだった。
例えば示談で経済的にそれまでのキャリアを捨てたくないという女性もいるのだろう。スキャンダルは本人にとっても致命傷で明るい希望などない。社会的に叩かれるのがセオリーとなっているのだ。それはふしだらな女という男性からの視線もあるが同姓からの視線もある。
ハリウッドの大物プロデューサーの弁護団にも女性がいるのだ。彼女らは仕事のためとはいえ平気で被害者を貶める。それはネット社会にも言えるこの社会のシステムとして機能しているのだろう。もちろん権力者を保守する機能として、そのおこぼれを貰うのが弁護士というわけだった。
アメリカ社会で平等性を目指して弁護士になったのに上流階級ばかり守る仕事だという小説を読んだ。ミシェル・クオ『パトリックと本を読む:絶望から立ち上がるための読書会』はその底辺社会の子供たちを救うのは教育だという。アメリカのフェミニズムの流れは子供たちの未来なんだと思う。その視点に立ったときフェミニズムの希望も見えてくるような気がする。
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