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ソクーロフ監督のタルコフスキー愛

『モスクワ・エレジー タルコフスキーに捧ぐ』(ソ連/1987)脚本・監督・ナレーション:アレクサンドル・ソクーロフ

ロシアが世界に誇る名匠アンドレイ・タルコフスキー監督。かつてソクーロフの第一回監督作品『孤独な声』が、旧ソビエト当局により上映禁止処分を受けた時、タルコフスキーは擁護し、更に「この映画にも欠点はあるが、それは天才による欠点だ」と評価した。そして後年ソクーロフは、タルコフスキーの人と思い出に捧げて本作を作った。彼の暮らした町や住まいを訪ね、その監督作品や撮影現場のメイキング映像を引用し、ナレーションも自分で担った。ちなみに終章に流れるチェロの演奏は、タルコフスキーと同じく亡命者だったムスティラフ・ロストロポーヴィチによるものである。

「ソクーロフ特集2021」にて。タルコフスキー愛が伝わってくる。『ノスタルジア』や『サクリファイス』の撮影風景。映画に登場した印象的なシーンも、カメラを構えたタルコフスキーと共に映される。ソクーロフの映画も眠くなるけど、しっかり印象的なシーンは目を見開いて観ていた。タルコフスキーの凛々しさ。

でもタルコフスキーが病弱だとは知らなかった。幼い頃の貧しい暮らしとソ連時代の不遇さはしっかり伝わってきた。イタリアに亡命したのは病気治療のためだとされているが、それだけではあるまい。ソクーロフも制限ある中でタルコフスキーの勇姿を存分に伝えていた。若い頃の俳優時代とか。

ソクーロフのドキュメンタリーの魅力は、制限がある中で精神的なものを取り出す。なんだろう。タルコフスキーの体制や病気と闘う姿とか。モノクロ映像でカラーじゃないのだが、そのことが余計に余分なものを削ぎ落として、タルコフスキーの自伝的な姿を伝えていた。かつての人が住んでいない家とか、その喪失の空間。そして、音楽の使い方が上手い。エレジーだからな。

パリの葬儀はロストロポーヴィチのチェロ独奏を映し出す。それだけでも、何かを語らんや。

関連映画:『精神の声』


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