百人一読(日本文学史)
今日から「百人一読」を始めます。読書ガイド的な百人の作家の一冊ですね。闇雲にはじめても戸惑うだけなので、文学史から過去の名作のストーリーや意義を知りましょう。今日は日本文学編。
1 高橋源一郎『日本文学盛衰史』
いきなり源一郎先生は抵抗があるかもしれないけど、これはよく書けていると思います。当時流行っていたブルセラ(もう死語かな)店長を夏目漱石にして文学論を辿っていくのです。それは「内面の私」。つまり「欲望」ですね。欲望から愛に繋げるのが文学?この『日本文学史』は伊藤整の『日本文壇史』をパロディ化したもので、伊藤整を読むのは大変なので(18巻もある)一冊で小説も楽しみたい人用ですけど、高橋源一郎は読者を選びますね。他にこういう文学史はないような。
2 夏目漱石『三四郎』
日本の近代文学を開いたブルセラ店長から、『三四郎』ですかね。いきなり『こころ』とか入るよりもまずこの辺の内面探索から。『吾輩は猫である』も面白いですが『坊っちゃん』は詰まらなかった。
3 樋口一葉『たけくらべ』
明治文学のアイドル的存在なのは当時はまだ文語の文学が読まれていた。その中に口語の鮮やかな涼風が巻き起こす少女時代からの脱皮(無理やり脱がされる)というような。短歌で与謝野晶子『みだれ髪』とかもいいかもしれない。
4 田山花袋『蒲団』
やはり『蒲団』は外せないのかな。短い作品なんでサッと読んでください。男のいやらしさなんて言わないで、内面なんだから。
5 松尾芭蕉『おくのほそ道』
そういう俗っぽさを漂泊という行為で仏教文学や西行の和歌に繋げようとしたのが芭蕉なのかな。先程の高橋源一郎『ゴーストバスターズ 冒険小説』も芭蕉『おくのほそ道』のパロディです。冒険小説と言えるのかな?「ゴースト」というのは内面の我でそれを叩きに行く旅ということか。それが無我の境地か?
6 石川啄木『一握の砂』
啄木の短歌(短詩)も内面の我を持て余して彷徨い砂遊び(詩作)に没頭する青春文学ですね。啄木の影響から寺山修司や俵万智が出てきたのです。自己プロデュース力ということかな。
7 こうの史代『ぼおるぺん古事記 (一)天の巻 』
こうの史代は『この世界の片隅に』の原作者。彼女が『古事記』を題材に描いたマンガですけど、これは素晴らしい。彼女は原爆のマンガも描いていた。
8 橋本治『百人一首がよくわかる』
『百人一首』の解説本はいろいろあるけど橋本治『百人一首がよくわかる』がわかりやすかったです。橋本治は古典に強いですね。『源氏物語』も翻訳しているし。
9 『男流文学論』上野千鶴子 , 小倉千加子, 富岡多恵子
いきなりフェミニズムに飛んでしまうけど、『源氏物語』や古典には男尊女卑の思想が流れているということですね。上野千鶴子が言及している『成熟と喪失―“母”の崩壊』江藤淳も重要ですね。ここに日本文学の核心があるような。それとそこで扱われている小島信夫『抱擁家族』とか。
10 『黄色い家』川上未映子
最近読んだ文学で一番重要だと思いました。川上未映子は要注意作家です。