マフムード・ダルウィーシュ「アナット変幻」四方田犬彦訳
マフムード・ダルウィーシュ『パレスチナ詩集』から「アナット変幻」。
「アナット」は月の女神で善神バアル(キリスト教では蝿の王というような邪神)の妹。バアルが死んだときに冥府から救い出したのが妹のアナットだという。「望みなき恋人たち」というのは兄妹愛なのか。鏡のようにだから似たもの同士なんだろう。「和解できずにいる二人の女」の一人はアナットで、もう一人はアスタルト(豊穣の女神)。アナットとアスタルトが同一視されていた時代もあるという。アナット=アテナ アスタルト=アプロディーテーという感じのようだ。
アナットは犠牲神のようだ。被造物というのは都市化だろうか?地という地が「ラピスタズリの笏と聖処女の指輪」に従うのは、新しい女王のようだ(エリザベスとか?)。
地下に留まったままであるアナットを呼び戻す詩なのだ。そして砂漠であるカナーンの大地を再び豊穣の地へ戻して欲しいのだろう。ジュリコは「ジュリコの戦い」という歌があったがあれがキリスト側の歌か?多分ジュリコで敗れたのだろう。