『短歌 2022年7月号』
【緊急企画】戦火を目の前に
この月は、ロシアのウクライナ侵攻の歌が多くて、社会詠(時事詠)は、ほとんどの人の短歌があり、それはこういう特集だったのかと思ったのだ。短歌の社会詠は多いと感心したのだが、すべてを読む気にはなれなかった。やはりただ時事を読むだけではなく、自分に引き付けて歌にしなと、歌にはならないと思ってしまった。
穂村弘はウクライナ情勢は全然歌ってなかった。それでも「コロナ禍」は歌っていた。でも一番好きだったのは懐かしの社会詠だった。
他に興味を惹いた短歌は、「さまよういのち」高野公彦の短歌
昌子の歌はパロディ短歌だろうけど、「黙す」は面白い。そのうちすべての歌人が「黙す」かな。
【特集】『岡野弘彦全歌集』を読む
折口信夫の弟子ということで『折口信夫伝』を読んだことがあったが(途中まで)短歌はそれほど興味がなかった。社会詠的なもので『バグダッド燃ゆ』が興味深い。その最初に歌に
「概み」は「おおむ」みかな。こういうわからん読みを使う人は駄目だった。でも「黙す」を使ったのは岡野弘彦が最初だったのかもしれない。少なくとも先に上げた高野公彦はこの歌も射程に入っていると思う。この最初の歌は釈迢空の歌を継承している。ただ次の歌になるとちょっととなるのだった。
戦時の日本の少年兵と重ねているのだと思うが、それ以上の言葉が出てこない。
『啄木ごっこ』松村正直
その他に面白かった記事は、最近ハマっている石川啄木の連載、『啄木ごっこ』松村正直。啄木の問答歌の系譜を穂村弘に見ているのがなるほどと思った。
『かなしみの歌びとたち』坂井修一
近代に前衛的な短歌を詠んでいた前川佐美雄は、戦時ファシズムの中で大政翼賛歌を作った。彼のマルクス主義やシュールレアリズムは社会の方を変えるといよりも自分の中にあるものを変えるという興味の元での短歌だった。まだ自己が定まっていなかったのだ(未熟だった)。そんな彼はモダニストだったとい指摘。戦時の歌人の変化を知る上でも興味深い記事だった。