彼岸のお花畑の世界
『MONTEREY POP モンタレー・ポップ』(1968年/アメリカ/カラー/スタンダード/1h18/)監督:D・A・ペネベイカー
ジャニス・ジョプリンの「ボール&チェーン」の絶唱。これ以上のシンガーはいないというよな。アルバム「チープ・スリル」で聴いていたけどこんなに凄いとは。ジャニスだけでも観る価値がある。
YouTubeで観られるけど、映画館の大画面とは迫力が違う。まあ、ライブが一番だと思うが、すでに故人だしジャニスの全盛期は映像でしか観られないのであった。
この映画がいいのは余計な説明がなくライブ映像だけを流しているところかな。それと会場の雰囲気とか最高だった。モンタレーという場所柄なのかウッドストックよりも明るい感じがする。演奏の方は熱い。ギターを壊さなくともいいと思うが、それだけ熱狂してしまうということなのだろう。でもジャニスの歌が一番。
お花畑と言えばお花畑なんだが(すでにほとんどが故人であるわけだし彼岸の花だった)、当時の雰囲気も圧倒的にいい感じなのは、なんだろう。ライブがそういうものなんだろうが、そこにいたものだけではなく、音楽を聞くことによって、その感動が内輪だけではなく外にも伝わってくるのだ。
「憧れのサンフランシスコ」とか「夢のカリフォルニア」とか夢のアメリカがそこにある。そして、それは「ボール&チェーン」とか「ペイント・イット・ブラック」の世界でもあるわけだが、そこにラブ&ポップの音楽で染め上げる。ポップである世界の力というか、そのエネルギーがパフォマンスとして、楽器を破壊したりもするわけなんだが。なによりも観客の表情がいいので、その世界が映像で伝わってくる。ママス&パパスのママスの人の口あんぐりの表情とか。
あとラヴィ・シャンカール が長いという人もいるようだけど、当時はビートルズやコルトレーンにも影響を与えた偉大なミュージシャンなのだから敬意を持つべき。客席の熱烈なスタンディングオベーションを見ればどれほどすごかったのかわかる。映画だと眠くなるのだけど、それはトリップ(旅)していく音楽だからだ。