シン・現代詩レッスン143
山本陽子「遥かする、するするながらⅢ」
豊﨑由美,広瀬大志『カッコよくなきゃ、ポエムじゃない！ 萌える現代詩入門』から。山本陽子は初めて知る詩人だった。その詩は常時ではないと感じたのは、言葉が崩れていく様が伝わってくる。オノマトペ的なのだと思う。表現としてオノマトペは詩としては有効だ。その呪術性なのか？
遥かする
純みめ、くるっく／くるっ／くるっくぱちり、とおとおみひあきと
おり むく／ふくらみとおりながら、
最初の言葉から意味不明なのか？「純みめ」は純粋に見ろではないか、そのあとでオノマトペが続く。オノマトペはその動作を表すものだとしたら、ここでのイメージは梅の木に目白が飛び回っている様子か。その「くるっくぱちり」という目白の目が見開いている。言葉を知る以前の世界に降り立つ目白だ。「とおとおみひあきとおり むく」この崩し方もなんとなく降り立つ目白のイメージで、「むく」は「無垢なる」感じか。純粋性なのだ。そして花とともに膨らんでいく。呪術の言葉としての神の降り立つような鳥の姿をイメージする。「／」は切れ目なのか。句読点もあるから、段落分けなのかよくわからなかった。そういう詩はこのnoteでも見かけるので、現代詩的な記号なのか？
わおみひらきとおり、くらっ／らっく／らっく／くらっく とおり、
かいてん／りらっく／りらっく
音を辿っていけば意味的なものがイメージできる。くらくらするが暗くはない。「らっく」「りらっく」という鳥のイメージは回転していく。一つの狂気性か？いやむしろそれをシャーマン性と言おう。これは詩なのだ。デタラメの言葉ではなかった。少なくともイメージ出来るものはあるのだから。
りらっく ゆくゆく、とおりながら、あき すみの、ゆっ／ゆっ／ゆっ
／ゆっ／ とおり、微っ、凝っ／まっ／
じろ きき すき//むじゅうしむすろしか
「とおり、微っ、凝っ」この流れはいいな。微小なものが擬態する感じか。あと二重スラッシュは出ないから半角で示した。パソコンにはない記号だった。そのへんのこだわりもあるのか？手書きという。無理に示そうと思うと正確には筆記出来ないのだった。そのオリジナリティ。「むじゅうしむすろしか」はなんか文句を言われているようだった。
すてっく てっく てっく
澄み透おり明かりめぐり、透きおり明かりめぐり
澄み透おり
澄みおり明かり澄みめぐり、めぐり澄み明
かりぐりするながら、
闇するおもざし、幕、開き、拠ち／ひかりおもざし幕開き拠ち
響き、沈み、さあっと吹き、抜けながら
響き ひくみ、 ひくみ、ひくみ透おり渉り、吹く、透おり
このへんは超絶技巧だ。ほとんど嫌になる模写だった。ただ意味的には目白が梅の中にいて明かりが差して、風が吹き付け、それが闇のような幕引きなのか？「ひくみ」とは引く身なのか？「透きおり渉り」は風の幕によってどこかに消えてしまう様だろうか
／
（…）
鵠じ狙い走り続け／はじめるながら／先拠って//
情い先拠って
彷//精気、透おり〈声ぬ〉 初源彷
（部分）
もうわけがわからなかった。「鵠」は白鳥の古語「くぐい」と読むが「くぐいじ」が意味不明。目白だと思っていたのが白鳥だったのか。「先拠って」は先に拠り所になる場所が情念ということだろうか？
彷はさまよう漢字。精気は情念なのか。透明の声なのか？「初源彷」は造語だろう。彷徨の源か？白鳥が源なわけだった。白い鳥から青い鳥へみたいなイメージか。難解過ぎるけど面白い。こういう詩もありなのか？みたいな。古典派をおちょくるような感じか。ほとんど漢字が意味不明になっていくがイメージは出来る。
広瀬大志は暗いイメージとして受け取るが豊崎由美は暗いイメージではなく一つの部屋として完結している「アウトサイダー・アート」のようだという。例えばヘンリー・ダーガーのような。「戦闘美少女」の本はお勧め。
戦闘美少女ものでやろう。オノマトペとシャーマン系はシリーズ化できそうだった。
無神論 第四話
オノマトペとシャーマン系
ウ音便の波状攻撃
うーうー唸る埋木から梅が咲くのは
讃美歌よりも黒魔術
あ音便はお断り神を君に変えただけの愛なんて
（あーあー 言っちまった 言っちまった 秘密にしていたのに）
イ音便はいい子たち、でもウ音便はうん子たち
（あーあー 言っちまった 言っちまった 秘密にしていたのに）
運を開くには神はいない
トイレの落書 「神がないなら自分の手でうんを掴み取れ」
（あーあー 言っちまった 言っちまった 秘密にしていたのに）
うめぼしばあさん、酸っぱい顔して迫り来る。
うーうー言いながら春に成れば陽気も変だね
埋れ木から梅が咲くのは陽気のせい
讃美歌よりも黒魔術、錬金術
（あーあー 言っちまった 言っちまった 秘密にしていたのに）