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湾岸地帯の刹那さ映画

『レッド・ロケット』(2021/ アメリカ)監督ショーン・ベイカー 出演サイモン・レックスブリー・エルロッドスザンナ・サン

解説/あらすじ
「ポルノ界のアカデミー賞を5回逃した」ポルノ俳優だったが、今は落ちぶれ無⼀⽂で故郷テキサスへ舞い戻ったマイキー。別居中の妻の家に転がり込むことに成功したが17年のブランクのおかげで仕事はない。昔のつてでマリファナを売りながら糊⼝を凌いでいたある⽇、ドーナツ店で働く少⼥と出会い再起を夢⾒るが…。

coco映画レビュアー

監督は『フロリダ・プロジェクト』のショーン・ベイカー。底辺生活者の生き様を喜劇的に描いて面白かった。登場人物のキャラが個性的でリアリティ。湾岸の吹き溜まりというような工業地帯は川崎を連想させた。工場地帯の夜景とか夜光そのものだった。日本だとこういう映画は湿りがちの暗い映画になるのだが、薄ぺらい明るさというか、その中に闇の世界が描かれているが秀逸。

ハリウッドの裏側というようなポルノ男優が主役なのは、向こう側の世界(ロサンジェルス)とは対極にあるテキサスの湾岸地帯。その向こうに東京ディズーニランドがある川崎なのだ。それは『フロリダ・プロジェクト』でも陽と陰の関係だけど暗い映画ではない。

ドーナツ屋のバイト女子(スザンナ・サン)がクリスティーナ・リッチとジュディ・フォスターを足したような感じでチャーミングなのだ。女子高生だけどセックスに興味ありありの感じで、ポルノ男優にひかかってしまう。ポルノ男優はその女子高生をデビューさせてスターにさせようと目論んでいた。彼女はミュージシャンということだったがピアノの弾き語りの歌も良かった。

主役であるマイキー(サイモン・レックス)の話術で巧みに人を騙しているような人生ではあるがいつかしっぺ返しが来るという映画。日本だと『傷だらけの天使』のショーケンと水谷豊を合わせたようなキャラかもしれない。コメディだからそういう展開なのだが、そのなかでも映像の撮り方が刹那系で上手いような。湾岸の寂しさがいい感じで出ている映画で、岡崎京子の『リバーズ・エッジ』もこういう感じで撮ればいいんだと思う。

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