少女は線路を超えて夢をみる
『Nina Simone And Piano!』1969年、NY・RCAスタジオ
昨日(1933年2月21日 - 2003年4月21日)がニーナ・シモンの命日だと知って久しぶりに聴いた。ニーナ・シモンをジヤズの範疇に入れるのは抵抗があるが、このピアノ演奏が素晴らしいので、ここに取り上げた。もともとニーナ・シモンはクラシックのピアニストを目指していたのだ。ドキュメンタリー映画『ニーナ・シモン〜魂の歌』では黒人街から線路を隔てて向こう側の白人街のピアノ先生の元へ通う姿が描かれている。好気な視線に耐えながら幼い少女は必死にピアノを弾くことで耐えただろう。しかしながら上に行けば行くほど黒人がクラシックをやるなんて場違いであった。彼女は才能がありながらクラシック・ピアノを断念せねばならなかった。
そして生活していくためにクラブ歌手として弾き語りでピアノ演奏をすることで糧を得ていた。ニーナのピアノには少女の頃の夢があると同時にその歌には黒人としてのやるせなさや差別に対する怒りがある。後に公民権運動(キング牧師と共に「セルマの行進」に参加)積極的に参加したのも理由があってのことだ。
このアルバムではそんなニーナのピアノに対する思い、少女の希望と断念せねばならない怒りとを弾き語りの歌で包み込む。
(ジャズ再入門No.5)