黒人という黒と白のグラデーション
『PASSING 白い黒人』(アメリカ/2021)監督レベッカ・ホール 出演テッサ・トンプソン/ルース・ネッガ/アンドレ・ホランド/ビル・キャンプ
異なる人種のコミュ二ティで交錯する人生を描いた #PASSING -白い黒人-が11月10日配信開始です。1920年代のNYで白人のふりをして生きる黒人女性のクレアは、古い友人との再会をきっかけに、再び自分のルーツと向きあうことに。人種を偽り生きざるをえなかった時代背景に胸が苦しくなります。
Netflix映画。色が薄い黒人が白人になりすまして白人と結婚したが白人の世界(人種差別)に馴染めなくて幼馴染のブルジョア黒人婦人に近づくが、彼女の意図が掴めないで夫(黒人)との関係を疑い、やがて悲劇になるドラマ。人間関係が複雑なドラマだけど面白かった。
最初、白人のふりをする黒人婦人が出てきてモノクロだけど、やっぱ骨格から黒人だろうと思うのだが別の白人の振りをする婦人の方が問題の人だった。ただ白人の旦那は彼女の人種のことは知っているのだが、白人としての妻にしている。段々色が黒くなってきて困るとか嫌なジョークを言う白人夫に嫌悪感を抱くのだが。
ブルジョア黒人婦人は、黒人問題とか意識が希薄だった。ただブルジョアとしてのプライドは高いから黒人嫌悪には敏感に反応する。でもブルジョアの考え方で、黒人下女と明確に距離を置いたりするんだけど、遊びにきた白人黒人は懐かしさを覚えてハーレムの暮らしが恋しくなる。最初は嫌な女として描かれているのかと思ったら、そんな喪失感があるのだった。それも自分を偽る嘘を突き通すことで失ったもの大きさに気がつくのだ。
パーティのシーンが象徴しているのだが、ダンスを思いっきり踊れる生活。社交ダンスではなくて、ジャズの演奏の中でのダンス。そういう派手好きな女性なのだがブルジョア婦人からみるとアバズレのように思える。だから、夫との間を疑ってしまうのだった。彼女はただ黒人の生活が懐かしかっただけなんだけど。そのへんの微妙な心理描写が上手い監督だ。脚本も監督が書いていた。
それまでの白人から差別される黒人というのではなく、黒人にも色々な人がいるということ。黒人夫は人種差別に問題意識があるが妻はブルジョア生活が大切。白人夫は人種差別主義者でその妻は白人に憧れてはいたが、ハーレムの生活に郷愁を覚える。この微妙な真理描写が上手い。演技もそうだけど演出も。モノクロというのもエキセントリックな感情を抑える感じでいいのかもしれない。モノクロの映像も物語に陰影を付けている。
ただNetflixはエンディングで余韻なく次の映画とか移り変わるから、ほんとこの点は駄目だな。エンディングロールまでゆっくり浸っていたい映画だったのに。
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