鮎川信夫「囲繞地」
「囲繞地」は読めない。(いにょうち)と読む。学生時代に植木屋でバイトしていたときにこの「囲繞地」を巡って争いがあり大ケヤキが植えてあったのだが、その木の枯葉が家に入ってくるので切れとかいう苦情で伐採したのだが、そのあとブロック塀で通れないようにしたのだ。そういう争いが好きな人達がいるんだと思って、仕事は仕事と割り切って根っこ堀りに苦労していた。
このあなたはM=自己だろう。海よという呼びかけは、ランボーの詩を思い出させる。「やっぱり同じ陽が照り」は「永遠」での再現か?
「夢見なさい」は墓地に眠る人なんだろう。Mか?ちょっと違う雰囲気だ。母と読む。Mとの関係悪化はランボーとヴェルレーヌの関係。同じ夢を何時までも見られるものではなかった。
母は既に死んでいるのだろうか?母とMとの三角関係か?怪しい手紙はMに宛てた手紙(詩)かも知れない。母の記憶の中の息子と離れていくのは必然のように思える。
許可を与えたのはそこが「囲繞地」に他ならないのだが、そこは人が入れない場所なんだと思う。黄泉の国というよりも無意識の中の死者の国なのだろう。そこにいる母のいる部屋。「オルフェウスの冥界下り」というような詩だろうか?
神話世界の帰還。「椅子に凭れて」はこの時期椅子に凭れている状態の詩をくり返し詠んでいる。その状態は魂が抜けたような状態なのだろうか?煙草の煙がたなびく部屋が囲繞地なのだが「荒地」という場所のような気がする。そこで眠れる世界に息を吹き込むような詩を詠むのだろうか?