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異様なクローズアップに射すくめられる映画
『ミカエル』(1924年/ドイツ/モノクロ/スタンダード/ステレオ/95分)監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー 出演:ベンヤミン・クリステンセン、ヴァルター・シュレザーク
著名な画家のクロード・ゾレは、画家志望の青年ミカエルを養子に迎え、二人で豪邸に住んでいた。パーティーで出会ったザミコフ侯爵夫人の肖像画を引き受けるゾレだったが、彼女はミカエルを誘惑し、ミカエルもその美貌に魅せられてしまい…。芸術家の孤独とミカエルへの愛、そして死を、耽美的に描いたサイレント時代の傑作。劇場での正式公開は今回が初となる。
もう出演している役者がなんだか異様な表情なのだ。化粧しているのかな?素顔じゃない人口美みたいな感じか。画家のモデルのミカエルという青年が女たらしで画家は多少同性愛的なものがあるのかもしれない。芸術家の愛は孤独だというのはわかりやすいのだが、ドライヤーの美へのこだわりがこういうサイレント映画では感じられる。隙のなさみたいな。だからけっこう眠くなる映画なんだが。
クロード・ゾレはクロード・モネみたいな、モネの風景画のようではなくて宗教画のような。最後に完成させる絵がヨブの孤独というようなモチーフで、ヨブの絵とゾレの役者の顔が重なるシーンがゾレの孤独をありありと伝えていて、そういう映像テクニックのお手本みたいな映画だった。
ミカエルというのは天使ミカエルだろうな。その彼が放蕩息子のように画家よりも女に現を抜かす。女優もモノクロだけど妖艶さが滲み出るような画像でドライヤーの映画はポスター映えがする。映画が活動写真というような、写真とか絵の延長上にあるような構図とかクローズアップの表情とか息苦しいほどの映像美みたいな。逆に見つめられているような。