主役を喰ってしまう助演役者のパウエル
Sonny Stitt"Sonny Stitt Bud Powell & Jj Johnson"
ソニー・スティットの過小評価を表しているアルバムで、バド・パウエルとJ.J.ジョンソンが堂々アルバム・タイトルに出ています。
このアルバムは、1~9までは、ソニー・スティットカルテットでそこでパウエルがバリバリ弾いてしまうので主役より目立ってしまった。主役を喰ってしまった助演というところでしょうか?それは、邦題「神の子は皆踊る」で凄まじいまでのパウエルのソロの前で皆踊れなくなってしまった。まさに全盛期のパウエルの容赦なさが出ているアルバムなのです。
ただソニー・スティットの朗々と歌うテナー・サックスはロリンズへ受け継がれて、コルトレーンが出てくるまではそれなりに存在感があったことはこのアルバムを聴けばよくわかります。もともとアルトサックスでチャーリー・パーカーの亜流のように言われた不運もありますね。イメージの問題として主流派にはなれなかったというような。
「サンセット」などのスロー・バラード系の曲を聴けば朗々と歌うソニー・スティットの良さが出ていると思います。そしてアップテンポの曲では懸命にパウエルに付いていこうする。
10曲目からパウエルがいないくて、ピアノがジョン・ルイスに変わっています。そこにJ.J.ジョンソンが加わっているのです。だから、それまではJ.J.ジョンソンはいなかった。ここからはパウエルはいないのです。まさにソニー・スティットのアルバムなのに、デカデカと二人の名前が併置されてしまっている。
10曲目からはパウエルが抜けたのでおまけみたな感じになりますね。聴く方も9曲目まででお腹いっぱいで、後は流してくれという感じですかね。もともとトロンボーンという楽器がハードバップには無理がある楽器なのに、J.J.ジョンソンは果敢に挑戦してますよね。彼以降のトロンボーン奏者はスライドよりもバルブ・トロンボーンという楽な道に走ってますよね。そこでJ.J.ジョンソンも時代遅れになっていく。ただここではけっこう頑張っている。それもソニー・スティットの頑張りに刺激されてのことだと思います。バップからハードバップの移行期にあるアルバムだと思います。
(ジャズ再入門vol.96)