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キース・ジャット死(詩)と再生の物語

"Death And The Flower"1974年10月9~10日NY録音。キース・ジャレット(p)デューイ・レッドマン(ts,perc)チャーリー・ヘイデン(b)ポール・モチアン(ds)グレルミ・フランコ(perc)
"Death and the Flower" - 22:49
"Prayer" - 10:12
"Great Bird" - 8:45

日本語タイトル『生と死の幻想』。ジャズを聞き始めた頃、バイト先の先輩からチック・コリア『リターン・トゥ・フォーエヴァー』(カモメのジャケットで有名な)とこの薔薇の絵のアルバムを借りた。彼は別にジャズファンでもなかったが刺激ある音楽が好きだった。そのぐらいこの2枚のアルバムは知れ渡っていたのだと思う。で、フュージョンぽいチック・コリアよりフリー・ジャズっぽい『生と死の幻想』の方を好きになって、ジャズの方向性を決定付けたような気がする。

"Death and the Flower" 

このキース・ジャレットのアメリカン・カルテットと呼ばれるメンバーでの完成形のような作品でその後、キース・ジャレットはソロ活動の方向性を示すのだが、当時は何故これほどのジャズをやりながらカルテットを解散させたのだろうと思った。たぶん、やり尽くして新しいアプローチがもうカルテットでは見いだせなかったのかもしれない。もう一枚カルテットの最高傑作と言われる『残氓"survivor's suite"』を聴けばこれ以上アメリカンカルテットを発展させることが可能だったかどうか。


キースはその時のジャズの流れをいち早く察知して取り入れていくタイプのピアニストで彼がマイルスの『ビッチェズ・ブリュー』でチック・コリアと共にツイン・キーボードで参加していたことにも伺われる。時代の最先端を感じていたかったのかもしれない。ソロピアノ・ブームもその後のスタンダード・ブームも時代の流れに乗るのが上手かった。これもそうした一枚なのかもしれないが、カルテットの他のメンバーのこだわりと強さがこのアルバムを生見出したのかもしれない。デューイ・レッドマンとチャーリー・ヘイデンはオーネットスクールの申し子で、彼ら二人の力によるところが大きいような気がする。

"Prayer" 

むしろキース・ジャレットの次の方向性は「祈り」と呼ばれるこの曲に現れているように思える。内省的なここでのキース・ジャレットのピアノはチャーリー・ヘイデンのベースを伴って叙情的に弾く。カルテットではなくベースとのデュオだ。彼はその後を暗示するには十分な曲である。

なお彼がこのアルバムのために創作した詩を上げておく。当時フリージャズではこうした詩を朗読するのもパフォーマンスとして流行ったのだ。

Death And The Flower
We live between birth and death
Or so we convince ourselves conveniently
When in truth we are being born and
We are dying simultaneously
Every eternal instant
Of our lives
We should try to be more
Like a flower
Which every day experiences its birth
And death
And who therefore is much more prepared
To live
The life of a flower
So think of Death as a friend and advisor
Who allows us to be born
And to bloom more radiantly
Because of our limits
On Earth
Think of this until you realise
Eternity
And cease to need
The illusion of Death
But do not do this
Before you lose the first great illusion:
The Illusion of Life
Because
To do this
You must die Many times
And live to
Know it


(ジャズ再入門vol.22)

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