タンジキスタン出身監督の「アラビアン・ナイト」風の不可思議な映画。
『ルナ・パパ』(1999/ドイツ・オーストリア・日本)監督:バフティヤル・フドイナザーロフ 出演:チュルパン・ハマートヴァ、モーリッツ・ブライプトロイ、アト・ムハメドシャノフ
タジキスタン出身の「バフティヤル・フドイナザーロフ監督」特集にて。旧ソ連邦だがアジア的なファンタジー。「アラビアン・ナイト」風なアラブの世界でもある。砂漠の商業都市の中で繰り広げれる結婚騒動。
ヒロインを演じるチュルパン・ハマートヴァは可愛いがアジアの映画には珍しく露出も多い。「アラビアン・ナイト」の世界だと思う。厳格な父と頭のネジが緩んでいる兄との三人暮らしの少女が旅芸人の一座の男と関係を持ち妊娠してしまう物語。兄が大江健三郎の光さんのようでもあり、兄を守る妹の映画、伊丹十三監督の『静かなる生活』を連想したが、この世界は騒々しい世界そのものだった。
最終的には兄に守られて新しい世界に出発するのが監督の持ち味なのかなと。それにしても今まで観たことがないような奇想天外のストーリーだった。物語の文法が西欧の論理的な感じではなく、次々と驚く世界に出会うという感じか?まずヒロインは歌と踊りが得意な娘で、旅芸人一座のシェイクスピア劇を観たいと思っていたが、父と兄と商売(行商)に行っていて観れないのだった。その劇場跡で男と関係を持つのだが、暗闇と崖から落ちていく間の出来事なので、夢の世界だったような印象を受ける。ただセックスをして、妊娠したということは後からわかるのだ………。
厳格な父は娘を許せるはずもないのだが、天命に従って諦めるのか、娘の幸せを考えてその男を探しに行く。花婿探しというのが一つのドラマなのだが、出会ったのは僻地医療をする医者だったが、この男は娘の父親ではないが一目惚れして、それで二人は結婚式を開く。村ではふしだらな娘で虐めがあったが、結婚が決まった途端村人総出の歓迎ムードに。そこで結婚式を上げている途中で空から降ってきた牛の下敷きになって、父と夫が死んでしまう(こんな感じでストーリーは進んでいく)。
残された娘と兄は再び村人に疎まれ、さらに軍隊の管理社会の中で兄の機転により、この世界から脱出していく。そして、子供を無事に産んだという物語なのだ。
旧共産圏の軍による管理社会と村社会の閉鎖性の中に「アラビアン・ナイト」のような奇妙な世界が混在している不思議な映画だった。全体的にはコメディ映画なのだろう。ファンタジーでもあるが。
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