枯葉剤の影響は、ベトナムの自然を破壊し人々をも苦しめる。
失われた時の中で(2022/日本)監督坂⽥雅⼦
解説/あらすじ
写真家だった夫・グレッグの突然の死。その理由がベトナム戦争時の枯葉剤にあるのではと聞かされた妻・坂田雅子は夫の身に起こったことを知りたい一心でカメラを手に取り、ベトナムへ向かった。そこで目にしたのは戦後30年を過ぎてなお、枯葉剤の影響で重い障害を持って生まれてきた子どもたちと、彼らを愛しみ育てる家族の姿だった。 それからおよそ20年。ベトナムはめざましい経済発展を遂げたが、枯葉剤被害者とその家族は取り残されている。今なお、枯葉剤の影響で重い障害を持って生まれる子どもたち。そのケアを担い、家計を支えるために進学を断念せざるを得ないきょうだい。無医村を周り支援活動を続ける医師。アメリカ政府と枯葉剤を製造した企業に対する裁判を起こした元ジャーナリスト。癒えることのない戦争に向き合い続ける人々の姿をカメラは静かに映し出す。
アメリカ人の夫が突然死したことで、その原因としてベトナム戦争当時の枯葉剤を影響があるのではないかと調査するためにベトナムへ。そこで枯葉剤の影響を受けた子供たちや家族の様子を伝えるドキュメンタリー。
実際にこれほど悲惨なの顔をそむけたくなるシーンが多いのだが、そういう状況で生き続けない子供たちや家族がいるということ。またその影響をアメリカ政府も企業も認めないで家族は自力で生きていかなければならない(あと施設とかあるが、それも閉鎖されるという状況もあったりして)。
日本ではベト君ドク君で枯葉剤の影響で生まれてくる子供は有名になったが、まだその影響を受けるほどベトナムの自然が破壊されているのだ。戦争のもたらした環境問題とも言えるが、それは戦争時だけでなくその後も今日まで続いているということだ。水俣の公害問題の様相もあるが、企業が戦争で起きたことだからと知らんぷりしているのだった。モンサントとか、日本でも農薬で入ってきている。
何よりもショックな言葉が出生前検診でそういう子供が出来たことを知るとなる中絶しなければならないこと。また実際に生まれてくる場合もあるのだが、母親に見せられないという。確かにエレファント・マンのような子供が生まれてきたら誰でもショックを受けるだろう。
それでもかれらは賢明に生きようとしている。施設の中でそういう仲間と暮らしているときはいいのだが、外に出るとイジメや多くの困難に出会う。だから家の中に閉じこもって大人になるという例もある。それを世話する母親と障害のない家族(姉だったり、叔父さんたちを面倒みる姪っ子とかの例も)の負担が半端ないのだ。彼等は保証もなしに貧しい中で生きていかねばならない。母親が自分が死んだことを考えるとどう生きていくのか考えられないという。息子の方が先に死んでくれればいいとさえ言う。
これは戦争行為症なのだ。日本に落とされた原爆と同じなのだ。戦争による兵器の後遺症、例えば劣化ウラン弾とか、そいう武器商人や戦争協力企業があるのだ。そうした責任問題を放置しておくのは許せない。
フランスでベトナム人の血を引く女性がジャーナリストして枯葉剤の影響を受け、裁判をしたのだが、被害者の弁護士は3人に対して、アメリカ企業は十数人の大弁護団で結局裁判には負けてしまった。それでもそういう事実を世間に知らしめたということで被害者の女性はこれからも戦っていく姿勢を示した。
フランスだからアメリカに対して裁判が出来たということがある。ベトナムは戦後保証とか出来ないのかな。アメリカが相手だからか ?そういう戦争後遺症を知らしめるためにもこのドキュメンタリーは意義があると思う。目をそむけてはいけない問題なのだ。
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