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「コンパートメントNo.6」はシャネルの5番より香ばしい

『コンパートメントNo.6』(2021年/フィンランド,ロシア,エストニア,ドイツ/107分)【監督】ユホ・クオスマネン 【キャスト】セイディ・ハーラ,ユーリー・ボリソフ,ディナーラ・ドルカーロワ,ユリア・アウグ,リディア・コスティナ,トミ・アラタロ


世界最北端の駅へ向かう寝台列車の6号室。
最悪の出会いではじまる最愛の旅を世界が絶賛。

モスクワに留学中のフィンランド人学生ラウラ。彼女の、古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅は、恋人にドタキャンされ、急遽一人旅に。そんな彼女が寝台列車6号コンパートメントに乗り合わせたのは、モスクワのインテリたちとは正反対の、粗野なロシア人労働者リョーハ。最悪の出会いから始まった、二人の長い旅の行方は……。

カンヌ映画祭ある視点部門で長編第1作『オリ・マキの人生で最も幸せな日』がグランプリを受賞し、輝かしい監督デビューを飾ったユホ・クオスマネン。ロサ・リクソムの同名小説を原案にした本作『コンパートメントNo.6』で、監督第2作にして同映画祭コンペ部門に選出され、堂々グランプリを獲得。フィンランド・アカデミー賞と言われるユッシ賞では作品賞・監督賞・主演女優賞など7冠を制し、アカデミー賞®国際長編映画賞フィンランド代表選出、ゴールデングローブ賞非英語映画賞ノミネートと世界中の映画祭で17冠の快挙を遂げ、フィンランドを代表する新たな才能が誕生した。映画祭で絶賛されたセイディ・ハーラ、ユーリー・ボリソフの演技と、『動くな、死ね、甦れ!』のディナーラ・ドルカーロワの出演にも注目。

携帯もSNSもない1990年代を舞台に、アキ・カウリスマキを思い起こさせるメランコリーとオフビートなユーモア、そして雪をも溶かす純な心が、不器用で孤独な魂を結びつける愛の物語。あなたはきっと、雪深い北の街を舞台に描かれる、その結末に心をくすぐられ、微笑まずにはいられないだろう。

オープニングの音楽とクレジット・タイトルに惹かれる。やはり音楽がいいと映画も良く感じられるのだ。オープニングはホームパーティ会場のシーンから。明るい場面からの一人旅、このへんの演出も上手いと思う。そしてコンパートメントの相席は自己中のロシア人そのものという酔っ払い青年。これはかなり嫌な旅になりそう。旅に夢のような出会いばかりあると思うのは大間違いなのである。「くたばれ!」の字幕がいい味を出している。この言葉はラストにも登場するが、そこでは言葉の意味が違ってくるのだ。密室の中の二人の関係のドラマが劇的に展開されてゆく。

そうか、この映画が一つのペトログリフ(絵言葉)だったのだ。その意味を知るのはこの相席の二人と観客だった。

フィンランドのトレイン・ムービー(ロードムービー)。フィンランド映画といえばアキ・カウリスマキだが、そんな感じの映画。異文化交流を最初は不条理的に描いていくのだが、旅を続けるうちに親密さを増していく。最後は夢のペトログリフを見つけて欲しいとまで期待してしまう(それはファンタジーだが、観客が期待するのだ)。

ロシア人青年の自己中だがその中にある人を思いやる気持ちとフィンランド女性(大学院の研究生?)の旅の思い出。旅をしたくなる映画だが綺麗事ばかり描いてないのがいい。その世界は氷の世界なのだが温かい。

くたばれ!「ハイスタ・ヴィットゥ」の映画。

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