「コンパートメントNo.6」はシャネルの5番より香ばしい
『コンパートメントNo.6』(2021年/フィンランド,ロシア,エストニア,ドイツ/107分)【監督】ユホ・クオスマネン 【キャスト】セイディ・ハーラ,ユーリー・ボリソフ,ディナーラ・ドルカーロワ,ユリア・アウグ,リディア・コスティナ,トミ・アラタロ
オープニングの音楽とクレジット・タイトルに惹かれる。やはり音楽がいいと映画も良く感じられるのだ。オープニングはホームパーティ会場のシーンから。明るい場面からの一人旅、このへんの演出も上手いと思う。そしてコンパートメントの相席は自己中のロシア人そのものという酔っ払い青年。これはかなり嫌な旅になりそう。旅に夢のような出会いばかりあると思うのは大間違いなのである。「くたばれ!」の字幕がいい味を出している。この言葉はラストにも登場するが、そこでは言葉の意味が違ってくるのだ。密室の中の二人の関係のドラマが劇的に展開されてゆく。
そうか、この映画が一つのペトログリフ(絵言葉)だったのだ。その意味を知るのはこの相席の二人と観客だった。
フィンランドのトレイン・ムービー(ロードムービー)。フィンランド映画といえばアキ・カウリスマキだが、そんな感じの映画。異文化交流を最初は不条理的に描いていくのだが、旅を続けるうちに親密さを増していく。最後は夢のペトログリフを見つけて欲しいとまで期待してしまう(それはファンタジーだが、観客が期待するのだ)。
ロシア人青年の自己中だがその中にある人を思いやる気持ちとフィンランド女性(大学院の研究生?)の旅の思い出。旅をしたくなる映画だが綺麗事ばかり描いてないのがいい。その世界は氷の世界なのだが温かい。
くたばれ!「ハイスタ・ヴィットゥ」の映画。
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