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百人一読(詩の本、その他)

「極北文学」にパウル・ツェランを入れなかったので今日は詩の本周辺とする予定だったのですが、今日で100冊になってしまったので後半は今までに漏れてしまった、これはぜひという作品を紹介します。



91 関口裕昭『パウル・ツェランへの旅』

パウル・ツェランはアウシュヴィッツの詩人というだけで終わってしまうのはもったいないと思う。この本はツェランに魅せられた作者がアウシュヴィッツ後のツェランの生きた人生の旅を辿っていくエッセイ。作者が多和田葉子『パウル・ツェランと中国の天使』の翻訳者で、多和田葉子の小説も同時に読むとめくるめくツェランの世界が見えてくるような気がする。


92  ボードレール『悪の華 』

やはり詩というとこの辺から入るのではあるまいか。ランボーということもあるかもしれないが、やっぱボードレールが一番だな。徘徊の詩人。


93堀口大學『月下の一群』

詩の本は好きな詩人がいるのなら別だがこうしたアンソロジーの中から好きな詩を見つけるというのもあると思う。堀口大學は今の時代には過去の人だと思うが、フランス近代詩と日本の近代詩に与えた影響は、コトバの響きにも感じられるかもしれない。詩は韻文であることが大切なのだということは堀口大學から学んだのかもしれない。


94 『イェイツ詩集(対訳)』

イェイツも大江健三郎の小説の引用で好きになったのですが、詩は特に好きな作家が引用していたから好きになるというパターンが多いかもしれない。大江健三郎は自身が詩人に成りたかったのか、そういう詩の引用も上手いと思ってしまう(ポーしかり、ブレイクしかり)。イェイツはいろいろと引用されたりするイギリスの詩人No.1ではないかな。


95 川本皓嗣編『アメリカ名詩選』

最近特にアメリカ詩に興味を持ったのは、編集者の川本皓嗣『アメリカの詩を読む 』を読んだのが大きい。合わせて読むことを勧める。川本皓嗣


96  ベケット『ゴドーを待ちながら』

ベケットは後期三部作の『モロイ』『マロウンは死ぬ』『名づけえぬもの』が圧倒的に素晴らしいのだが、わたしもまだ全部を読んでいないので(読めない)ので、入門としては戯曲でもあるこれがいいのかな。有名作品で日本人でも上演されたりする(NHKとかで放送されたり)。その不条理さはカフカを超えるかもしれない。


97 石牟礼道子『苦海浄土』

池澤夏樹の世界文学全集はやはりお勧めなのだが、その中に日本人としてただ一人入っているのが石牟礼道子なのだ。日本文学全集の方にも別の作品が入っていた。今ほど石牟礼道子が注目され評価される時代はなかったのでは。エコロジーの問題と共同体の問題と権力の問題、それらを聞き書きとスタイルで書いている本なのだが、石牟礼道子は文学のシャーマンだった。


98『仰臥漫録 (ぎょうがまんろく)』正岡子規

俳句の本は芭蕉の『おくのほそ道』を紹介済みなのだが、もう一冊となると正岡子規かな。正岡子規は俳文という俳句だけじゃなく、病床日記と絵も付くのだ。それだけの表現者であるから、俳句だけじゃなく短歌でも有名なのだろう。改革者だよな。


99 穂村弘『短歌という爆弾』

短歌本ではこれが入門書だったかな。すぐに歌人になれるような気がした。歌人=コトバのテロリストなのも気に入った。もっとも最近の穂村弘は体制側だが。俵万智『サラダ記念日』が表街道の世界なら裏街道という感じか?


100 『万葉集』

本当は『古今集』の方が好きなのかもしれない。しかし『万葉集』の方がバラエティに富んでいるのは、長歌もあり短歌もあり、天皇もあり東人もありというところだろうか?特に大岡信『私の万葉集 一(全5巻) 』はお勧め。


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