ポーの原作を現代に翻案するドラマ
『アッシャー家の崩壊』(公開日:2023年10月12日/ アメリカ)原作:エドガー・アラン・ポー 製作総指揮:マイク・フラナガン/ トレヴァー・メイシー 出演:ブルース・グリーンウッド/ カーラ・グギーノ/ メアリー・マクドネル /カール・ランブリー/ マーク・ハミル 全8話
各回がエドガー・アラン・ポーの短編のタイトルとなっていて、製薬会社のオーナー一族の崩壊していく様をホラーチックに描く。原作を読んでなくてもホラーとして見れば面白い。デヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス』に似たような雰囲気があると思ったのは登場人物の個性的な面々だろうか?登場人物は頭に入れておいたほうがわかりやすいが、基本ホラーなのでそれほど厳密に覚えなくてもいい。
ここのサイトは詳しい。ホラーだからここまで知らなくても単純にホラーを楽しみたい人は見ない方がいいかも。私はポーの原作との見比べでポーの作品をどこまで現代にしているのかが興味あった。
一代で莫大な富を築いた製薬会社のオーナー、ロデリック・アッシャーとその一族(息子)たちの崩壊(死)のドラマで、登場人物はポーの短編の人物に由来していたり、いなかったり。「アナベル・リー」(ポーの詩のタイトル)が亡き妻として出てきた時はおおーっと思った。
一番好きな人物は、変顔の個性的な現在の妻であるジュノかな。彼女は元ジャンキーだけど大事故の後に製薬会社の薬によって新たな人生を得た人物でかなり重要な役どころ。
こいう人物設定はデヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス』を思い出す。『ツイン・ピークス』は村人が登場人物だったが、それが家族となったと考えればいいのかな。デヴィッド・リンチはポーが好きそうだし、この制作者がデヴィッド・リンチを好きそうな感じを受ける。
第二話「赤死病の仮面」でハマってしまった。遊び人の御曹司プロスペローがVIPを招いてパーティーを開くのだが、赤い仮面を付けた女が現れて惨殺(呪い?)する。次々に一族に降りかかる災難(殺人)は意味不明だが、ポーの原作をよく捉えていると思う。呪われた一族なのは間違いないのだが……..。
最初に裁判シーンでアッシャーの製薬会社が身内の密告があり、とんでもないスキャンダルを抱えているという弁護士デュパン(ポーの小説では探偵)が明らかにするのだが、その密告者が誰かは明らかにしなかった。その密告者探しもあるのだが、次々と起こる身内の殺人事件によって呪われた一家というストーリーとして展開していくのだが、その殺人シーンがけっこうエグいというかTVコードのぎりぎりっていう感じだった。映画だったらもっと残虐になるのかもしれない。
そして弁護士デュパンはアッシャーの親友であり、過去を知る人で彼は告発事件に関わりながら殺人事件も相談されるという立場になっていく。その会話のシーンで起こる数々の幻影もホラーになっている。このシーンはポーの短編そのものなんだけどドラマではわかりにくいかもしれない。ホラーだと思えばなんでもありなのかと納得するが。
その犯人探しの面白さもあるのだが、最後まで犯人が分からなかった。こういう推理ものは得意じゃないのだが、ホラードラマとして面白いと思って観ていた。もちろん原作をどうアレンジしているかが一番としての興味としてあるのだが。短編だけではなく、詩も重要なテーマとなっているところに感心した。ラストの『大鴉』は特に有名なポーの詩なので、これは頭に入れておいたほうがいいかも。そのポーの詩にこのドラマのモチーフがあると思う。