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サインとは情報を伝えるもの

本田弘之、岩田一成、倉林秀男(2017)『街の公共サインを点検する 外国人にはどう見えるか』大修館書店
を読みました。

言語学が専門の著者が、街の公共サインについて論じています。

日本の公共サインは、日本語と英語が併記されているものが多く見られます。
ですが、本当にその選択・表現が適切なのでしょうか。
「please」の乱用、日本語と異なる内容の英語など、引っかかるサインが多いようです。

「please」を使うのは、依頼や利用者になんらかの利益がある行動を示す場合だそうです。

駅名表示は、ひらがなで読み方を示していますが、道路標識はローマ字で表記しています。
ローマ字で日本語の音を表現することが適切なのか、著者は問題を投げかけています。
表記の不統一、訓令式かヘボン式か、実際の日本語の音とは異なる音で理解される可能性などなど。
国や都が方針を打ち出していますが、曖昧で一貫していないというのが現状です。

固有名詞を二言語表記にしようとして、わけのわからない表現になるという例もあります。
「県庁前駅」が「Pref. Office-Mae Sta.」と書かれていても、一体なんなのか、すぐ理解できるひとはどれほどいるでしょう。日本語母語話者も、「Pref. Office-Mae Sta.」がどこにあるか聞かれても困ってしまいます。
こちらは、しばしば問題になっているように感じますが、恐らく特に改善は見られないのではないでしょうか。

多言語表記をする場合は、「日本語→英語→中国語→ハングル」の順で並んでいるものが多いのに、あるサインだけその順序を入れ替えると、そこに意味が加わってしまうということも意識せねばなりません。

EU加盟国の多くは、様々な言語を使うひとが多いからか、その国の公用語とピクトグラムを使用することで対応しているようです。
特定の言語を選択するのではなく、誰でもわかるような共通のピクトグラムを使用することで、情報が伝わりやすくなります。
サインにも余白ができ、すっきりと見やすくなるのではないでしょうか。

デザインの観点から公共サインを考える本は読んだことがありましたが、言語学の観点から分析するというのもとてもおもしろかったです。

日本やドイツ、中国などの公共サインの写真も豊富で、言語学に興味がなくても楽しめるのではないかと思います。


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