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【読書録】「飛び出す!公務員 時代を切り拓く98人の実践」

現役の地方公務員である私にとってとても刺さる本だった。
直接のお知り合いや、オンライン会議でお話をしたことがある人が多数寄稿している。
この本が出版されたのは2021年。3年後の今読んでみると、寄稿者の中には、現在もご自身の自治体で活躍している人もいれば、公務員から民間企業に転職したり起業した人や、首長になった人、別の自治体に転職した人もいる。
本を読み終わった感じたこと・考えたことを書いてみる。


1.なぜ読もうと思ったか

地域活性化センター」が発行協力・監修をしていたからという理由が大きい。

公務員になる前の民間企業時代から地域活性化には興味があり、何かの勉強会に行って見る発行物や、ネットで流れてくる地方創生に関するセンスが良い記事に「地域活性化センター」の名前があり、その頃から名前は知っていたし、自分の考え方や方向性に近いのかもしれないと思っていた。

その後、西会津にUターンをして、地方公務員となったが、業務の中で、または地域活動の中で地域活性化センターの取り組みは度々目にしたりしていた。半年に1回くらいは職場にセンター発行の冊子も回覧で回ってくるのでよく読んでいる。
地域活性化の本質まで下がって研究や実践をし発信をしているのだなと感じた。
そのような流れの中、地域に飛び出している公務員たちの地域での実践をまとめた本が、地域活性化センター監修のもと出ているということを知り、これは読むしかないと思った。

2.やはり「地域での実践」

地域活性化や地方創生関係の本は、これまで色々と読んだし、庁内外問わず研修を受けたり、勉強会も開催してきた。
特に、役場の事業として実施されていた(現在もある)「協働のまちづくり」事業は本当に勉強になった。

この協働のまちづくりのグループの1つであり、私も参加していたのが自分たちで駅の待合室をDIYしようというプロジェクトだった。
JR新潟支社や役場に交渉したり、実際に駅を使う高校生にヒアリングをしたり、設計を学んだりしながら、30年間放置されていた駅の1部屋を自分たちでDIYをして待合スペースに変えることができた。

自分たちで駅のDIY

これらの経験から地域を活性化していく「原理原則」のようなものが見えてきた。それは・・・

  • 小さくても良いから、とりあえずやってみる(=自分発の実践)

  • 寛容性(=心理的安全性)のある場をつくる

  • 地域はヒーローが来て変えてくれるというのは幻想。本気の普通の個人が地域を変える

本書に掲載されている「飛び出している」公務員たちの実践は、まさにこの原理原則を実践したそれぞれの人の仮説と行動の事例集だと思う。

私は地域に入っていくことや、地域での実践が最強であると思う。
昨今は地方創生や地方活性化の機運が高まってきて、官民問わず地方への関心が高まっている。
セミナー、勉強会、現地ツアーなども年々増えてきている現状がある。また、ふるさと納税は市場規模が1兆円を超えて、大変盛り上がっており、行ったこともない地方に目を向けるきっかけとなっている。
また、都市部のいわゆるエリートのビジネスパーソンやイノベーター、起業家なども何かしら地方と関わりを持つことが増え、大企業やベンチャー企業、研究機関、大学等が自治体と連携協定を結んでいることも多く目にする。トレンドになってきているのだと感じる。
地方創生の成功事例と呼ばれる自治体がメディアに取り上げられることも多くなった。

このように地域に関心が向いていて、地域に関わろうとする人も多くなってきている。
これは大変良いことなのだが、一方で名ばかりコンサルのような企業が入ってきて地域の実情や地域らしさを無視したソリューションを提案してきたり、セミナーや現地ツアーでしか得ていない知識をもとにして地域に対して上から目線で何かを言ってくるような人も出てくる
彼らについては地域に入るとか、地域で何かを泥臭く実践するということがない。なので、全く地域活性化の本質からズレたものが出来上がることがある。

しかし、本書に登場している公務員たちは、自分が地域に入って、地域を見つめ、何かしらの「実践」をしている。だから成果も出るのだと思う。

本書では98人の実践が掲載されていたが、実践の仕方はそれぞれ違うし、業務としてやっているのか、プライベートでやっているのかも違う。
出発点も最初から「地域で何かしたい」と思いを持って行動している人もいれば、「誘われたから」や、「なりゆき上やるしかなくて」という消極的理由で始めた結果、のめり込んでいった人もいた。
それでも共通していることは公務員の本質でもある「地域を良くするため」であると思う。

言い換えれば本書を読めば公務員の98パターンの地域課題へのアプローチの仕方があるわけなので、今地域で何かをしたいがどうアプローチしたら良いか悩んでいる公務員がいれば、読んでみることを強くお勧めする。
自分に合った地域へのアプローチの仕方が見えてくるはずだ。

3.私の実践

本書に登場する公務員の熱の入った実践にかなり触発されれしまったので、私の地域への飛び出し方も簡単に紹介させてもらいたい。

【進化思考】

デザインストラジストの太刀川英輔氏が提唱した「進化思考」という思考法がある。
生物の進化に学んで「変異」と「選択」を往復して新しいコンセプトやアイディアを形にしていく。

進化思考

私はこの進化思考を学べる「進化の学校」の1期生となり、2021年2月〜5月の毎週日曜日の朝7時から全国の仲間と進化思考を学んでいた。
この進化の学校のプロデューサー的立ち位置なのが、本書P74にも寄稿している元塩尻市職員で「日本一おかしな公務員」として有名な山田崇さんだ。

山田さんの思いとしては、全国の公務員に進化思考をインストールして創造性を高めてイノベーションを起こすというものだった。
私自身も進化思考を使ってできたアイディアを西会津での実践で用いることで、ドローンやコタツ、音などの各種プロジェクトが生まれた。

私と進化思考の関係はこちらから。

また、進化の学校の仲間と西会津町をフィールドにした「進化の合宿」を企画した。西会津のキーパーソンの話を聞いたり、地域の実践の現場を見に行ったり、進化思考のワークショップを開催した。
その結果、西会津に関わってくれる人もおり、実際のプロジェクトにつながっていたり、西会津を研究題材にしてくれる研究者の方も出てきている。

進化の合宿

2023年には山田崇さんからお誘いいただき、岡山県で実施された市町村職員向けの進化思考研修で、80名の前で事例を発表させてもらった。

岡山県での進化思考研修講師


【ドローン事業】

進化思考をきっかけに、西会津町の目の前の美しい風景をどのように進化させれば良いかを考え、ドローンを始めた。

ドローン

16万円を自費で出し、初めは自分の趣味として実家の里山や田んぼを撮って、職場や観光協会の観光素材に少し使ってもらえれば良い程度に思っていた。
ドローンは規制や手続きが大変というイメージがあるが、過疎地で空港も近くにない西会津では、ほぼ手続き不要で飛ばすことができたし、国への申請が必要な「飛行経路包括申請」「夜間飛行申請」「催し物上空飛行申請」などは、公務員として得意分野であったので、スムーズに許可が下りた。

風景の研究やその土地を掘り下げていくうちに、撮り方も変化していった。

各季節を撮影してSNSに投稿していたら、町内のデザイナーが取り上げてくれたり、役場内の広報部署が写真を使ってくれたのをきっかけに本当に多様な使われ方をするようになった。

・テレビ番組への提供(NHK全国、福島県内民放、東北広域、関西広域、全国BS)
・環境省主催の新宿御苑での写真展示会に出品
・県庁発行の冊子への掲載、資料の表紙への使用
・町の広報誌、ホームページのフロントページ、ブランドブックへの掲載
・台湾国立文学館主催事業のポスターとホームページに使用
・新潟日報のシンポジウムでの使用
・プロのアーティストチームの作品づくりへの参加
・大学教授の著書の写真提供
・リトアニア大使館のアート企画に出品
・鈴木寛氏主宰の「社会創発塾」の募集広報に使用
・総務省ふるさとづくり大賞授賞式の展示で使用
石高プロジェクト(NFTを用いた米販売プロジェクト)のブランディングに提供
・西会津町町制70周年式典のメインビジュアル
・災害現場での撮影
・ドキュメンタリー映画「つぎのみんわ」にドローンアーティストとして参加
・阿賀野川流域アートプロジェクトにドローンアーティストとして参加
・各集落の上映プロジェクトへの協力

自分だけで小さく始めたことが、いつの間にか大きい渦になっている。
私=ドローンの人というのが役場内はもちろん、町民にも認知されるようになった。
一番嬉しかったのは、地元集落の高齢者の方々が「自分の住む集落がこんなに美しいと思わなかった!」と言ってくれたことだ。
それまでは「こんな畑や山の風景なんて見飽きた」「田んぼと山しかないこんな田舎に何の価値があるんだ」というような人もいた。
しかし自分たちが暮らす少し上からの視点に立ってみると、こんなに美しい風景があると知ってくれた。地元の人のシビックプライドを上げることができ、これはとても大きなことであると思う。

私自身もプロのアーティストや映画監督の作品に参加し周囲から「ドローンアーティスト」と呼ばれるようになった。


【コタツプロジェクト】

幼少期から、11月ごろの稲刈りが終わった後の田んぼに寂しさを感じていた。

稲刈りの後の田んぼ

春は水が張り鏡のようになり、夏は青い稲が風になびき、秋は一面金色の海のように、冬は田んぼに積もった雪の上で火の祭り「歳の神」がある。
では秋と冬の間には何があるかというと、刈り取られた稲の下だけが残された茶色い田んぼが町中に広がっているのである。
そこで進化思考を使ってつくったのが田んぼにコタツを置くプロジェクト「DEEP集落大コタツ。」だ。

1回目コタツプロジェクト

田んぼはかつて村中の人が総出で田植えをして稲を育てた歴史があり色々な人が集まって協力するというメタファー。
コタツは、昔は大家族でコタツを囲んでいた温かい家庭のメタファー。

この2つを掛け合わせることによって、多くの人が集まり、寛容な場作りをしてアイディアやイノベーションが生まれやすい土壌をつくろうというコンセプトのもとプロジェクトを開始した。

詳しくはこちらにまとめたが、当初は田んぼにコタツを置くなどというふざけたことに協力してくれそうな人はいないと思っていたので、実家の田んぼで1人でやってみようと思っていた。

しかし、一緒にやってみたいという人が集まってきたり、農家さんから広い田んぼを借りたりできて1回目を実施した。

思ったよりも人が集まり、好評を博したので、2年目からは「日本田んぼコタツ協会」という団体を立ち上げ、組織的に活動をしている。

コンセプトをメンバーで夜な夜なオンラインで話し合ったり、ロゴやPVをデザイナーに頼み、何度も打ち合わせをして私たちの思いも入れつつカッコよくデザインしてもらったり、外部からの依頼でコタツプロジェクトを実施している。

日本田んぼコタツ協会ロゴ

その結果、テレビやメディアに取り上げていただいたり、某国内最大手通信キャリアの関西支社の社内研修に事例として使っていただいたり、都会の外資コンサルや国家公務員、起業家がわざわざ入りに来たりもしている。他の自治体から事例発表にも呼ばれたことがあった。

磐梯町での事例発表

このコタツの活動は、町の職員研修にも結びついた
コタツに入りに来ていただいた農水省官僚で鹿児島県鹿屋市の元副市長福井逸人さん(カンパチダンスで有名)に、コタツで「西会津町で職員研修をしてくれませんか?」とお願いしたところ、実際に来ていただいた(職場の研修担当者が私の同級生で、上司も協力的だったので運が良かった)。

西会津町での職員研修

2024年は協会として総務省の都市と農村交流事業にも協力させてもらった。

都市と農村交流事業

秋のシーズンは、地域の人と外の人の交流の場となっている。
都会の外資コンサルで普段バリバリ仕事をしている人が、限界集落のおばあちゃんとコタツでお茶を飲みながら話す風景というのが個人的にはとても好きだ。こういう風景を求めている。
こちらも1人で始めたことが気がついたら大きな動きになっている。

地域の人と外部の人が交流する


【自然音のサブスク化プロジェクト】

このプロジェクトは進化の学校1期の同期生である官民連携事業研究所CCOで元岡崎市役所の晝田浩一郎さんとの出会いから始まった。

西会津町の自然音を集音し、整音した上でApple musicやSpotifyなど70の媒体で世界に発信するプロジェクトだ。
役場内で企画書を書いて上司に提案をして了承をもらい、各事業者と連携協定を締結して実施をした。

メディアにも掲載された

ちょうどコロナ期間中で直接の観光施策が何も実施できない中、音を通して西会津を感じ取ってもらおうとしたことが注目され、色々ば場所で取り上げていただいた。
このプロジェクトを始めた2021年は町のデジタル戦略を策定した年で、地域資源のデジタル化としても位置付けられたし、「地域資源をテクノロジーを使ってサブスク化」というコンセプトも注目された。
県内のNHKを除く民放テレビ局に取材されてテレビ番組にしていただいた。各社の取り上げ方の違いや番組の構成がに独自性が出ていて非常に面白かった。新聞にも取り上げてもらった。
官民連携協定の1つを主導できたことは、とても貴重な自分自身の経験値となった。

現在も各サイトで配信されている。
元データは整音データをもらえたので、ドローンの映像と組み合わせて、西会津の映像と音で各集落で上映会を実施して、地域の方に喜んでいただいている。


【青年会活動】

出身の集落の青年会活動がとても面白い。

青年会で夏祭り

西会津町内の全集落を見ても、青年会が残っているところはほとんどない。かつてはどの集落にもあったはずなのに。
集落の幼馴染や、私のように外から戻ってきた人、外に住んでいるけれど青年会には入っているメンバーがいる。
季節ごとにイベントを開催したり、飲み会を楽しんでいる。
年明けの歳の神(火の祭り)、夏祭り、肝試し、秋祭り、奉仕活動。

村祭り
萱刈り
歳の神

準備はそこそこ大変だが、同じ村で育った地元の仲間やちょっと上の世代の先輩方と話しているのはとても楽しい。

最近では他の集落の子供達が秋祭りに参加しに来るということも起こっている。昨年からは青年会の会長となった。

首都圏からUターンして西会津町役場に入庁した頃は、自分の出身集落のことなど見ようとしていなかったし、当然青年会にも入ろうともしなかった。町場で町内で起業した人や移住者や地域おこし協力隊との活動がとてもかっこよく見えて、講演会に参加をしたり、ワークショップに参加をしていた。

数ヶ月が経った頃、当時の所属長と業務評価面談をした際に「町内で活動をしているのは大変素晴らしい。しかし基本は自分の集落。まずそこをしっかりしてから外に出た方が良い」と言われた。
その時は、正直「この所属長は考えが古いんだな」「移住者とか協力隊と一緒に新しい活動をした方が町のためになる」と思っていた。

自分の集落での泥臭い活動よりも、キラキラした今風のカッコ良いワークショップや講演会に惹かれていたし、自分自身もそういうキラキラした1人でありたいと思っていた。

しかし、紆余曲折があって、地域で実践をしている今だからこそ当時所属長が言っていたことが分かる。自分の地元での活動が最も基本であると。
地方活性化や地方創生の本質は、地域に入って、その地域の人と話したり、時には衝突して少しずつ前に進むことだ。泥臭さやドロドロ感がない地方創生や地方活性化はない、と今は思う。

本書で直接的にこの泥臭さやドロドロ感を書いている人はあまりいないが、行間から「やはりどの地域も苦労した上で成り立っているな」と感じた。

今は青年会としての活動はもちろん、集落で実施する季節ごとの人足(にんそく=奉仕活動のこと)にも、ボランティアとして参加しているし、地区の運動会でも係員を務めている。知り合いも格段に増えて仕事で役立ったことが何回もある。
地域に入るって、本当に面白い。

集落の人足


4.実践者のナレッジ共有

今、公務員間の情報交換の場として、全国の公務員が入るオンラインサロンや会員制のメーリングリストのようなものがたくさんある。
当初は公務員が集まるオンラインサロンのようなものが好きではなかった。意識が高い公務員が集まって話し合って、勉強会やワークショップはするが、「勉強になったね」で終わって地域での実践はないのではないか?と思っていたからだ。

そんな印象が変わったのが、山田崇さんが主宰する「市役所をハックする!」だった。

そこで出会った地方公務員たちが、それぞれ自分たちで調査活動をしたり勉強会を開いたりして、学んだことを自分たちの地域で「実践」をしている。無料ではなく、身銭を削ってやってみるというのも好印象だった。

また、毎年1回公務員が表彰されるHOLG社主催の「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」という公務員を表彰する賞がある。

実はこれも当初は「公務員サロンとかをやっている人が知り合いどうしで推薦し合ってるだけだろう」「公務員の知り合いが多い少し目立った公務員が受賞するものだろう」と思い、あまり関心がなかった。

しかし、実際に公務員アワードを受賞した人の事例紹介動画を見たり、受賞した人に実際に会って話してみると、その熱がじりじりと伝わってくる感覚があった。その実績に裏付けされた自信が伝わってきて、本当に成果を出したので、受賞しているのだということが心で感じられた。
公務員がここまでやって良いのだと希望も感じた。
本書で登場する公務員はアワードをとるような実践をしている人ばかりだったし、受賞者も寄稿しているが、まさに文面から熱が伝わってきた。

それ以来、自分の自治体以外の公務員との交流も広げるようにしてきた。
市役所をハックする!以外にも副業を実践する公務員の集まりである「フクギョウ公務員」というコミュニティに入った。
また、リアルでは新潟市をはじめとして、新潟方面の自治体職員の皆さんと交流する機会も多くなった。SNS上でも他自治体の職員さんたちが一気に増えてきた。

本書の公務員たちもそうだが、自分たちが創意工夫をしてきた成果を共有すること、そして視野が狭くならないために、オンラインサロン等を活用して他自治体の職員と交流すること。この重要さが大変よく分かった。

本書はこういった地域で行動する公務員のナレッジを共有するという意味でも非常に意義のある1冊であると思う。


5.成長社会から成熟社会の時代の地方公務員

昨今の社会は、成長社会から成熟社会へと変わり、画一化から多様化へ、集中から分散へ、正解がある時代から、正解がない時代へと変化している。

成長社会は経済成長や都市化、モノやカネを持つことが良いとされ、地方の人が都会に出るのが当たり前であった時代があった。
経済が成長する中で、資本主義の外にあり、経済の中でいらないようなもの、例えば、土地の歴史、家の歴史、人情、近所、旅(昔ながらの旅というとらえ方)、自由、故郷、田舎、大家族・・・といったものが価値がないものとして位置付けられていってしまった。

しかし、成長の時代が終わり、社会が成熟していく中で、それまで信じられてきた神話(終身雇用、学歴主義、大企業は倒産しない)といったものが崩れてきている。人々が依りどころとしていた基盤が揺らいでいる時代だ。
そのような中で、これまで排除されてきた「地域」や「近所」「家族」といったものが見直されてきている。3・11やコロナショックでその傾向が加速しているように思う。

この時代にあって、まだ地方には、地域も残っており、土地の歴史、家の歴史、人情、近所、故郷、田舎といったものがある。

基盤がない時代だからこそ、地方に残っている人間本来の温かみやwell-beingを考え、人を大事にする社会づくりが大事なのではないか?

本書に寄稿している自治体職員も皆何か自分なりの「well」を考え、地域に落とし込もうとしているように見えた。

これから重要なのは、地方を切り捨て、経済一辺倒の「拡大」の結果の上にある活性化でではなく、本質に降りていって、何がそこに生きる人のwellであるのかを考えることではないか。
そんな仕事をする自治体職員が次世代の公務員なのではないか。

本書を読んでそのように感じた。

2019年に亡くなった京大客員准教授で投資家の瀧本哲史さんは、若い世代に向けて「自分の人生は自分で考えて自分で決めなさい」と言っている。
正解がない時代になってしまったから自分で仮説を持って、その仮説を試してみるしかない。

本書の自治体職員たちは自分の仮説を試しているようにも思えた。
全国の地方公務員の熱いエネルギーが込められた事例集と言える。機会があれば、本書に登場する方々と語り合ってみたいし、今後地域活性化センターにも何かしらの形で関わらせていただきたい。


番外編 実は私も・・・

実は本書の山田崇さんが寄稿しているページで、P75の写真には私も写っている(笑)
一応私も本書の登場人物ということになるか。

地域活性化センターの公式YouTube「地域づくりTV」の動画にもインタビューで私が登場しているし、ドローン映像は全て私が提供させていただいた。
西会津町のキーパーソン矢部佳宏さんが令和5年度のふるさとづくり大賞を受賞し、その活動紹介動画にインタビューと映像提供という形で関わらせていただいた。

この動画で語られている「辺境から未来を描く」。
自治体職員として、そして1人の町民として地方から辺境からワクワク感や面白さをつくりだしていきたい。
そんな思いにさせてくれる1冊だった。

『飛び出す!公務員 時代を切り拓く98人の実践』


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