『アフリカの日々』
デンマーク出身のアイザック・ディネーセンが、第一次世界大戦後のケニアでコーヒー農園を営み、失意の中農園を去るまでの日々の記録。
ディネーセンの視点は常に公平で、記録はアフリカに対する驚きと敬意に満ちています。ケニアの高原を走るライオン、家の軒先まで現れるブッシュバックの黒い瞳の輝き、彼女の下で働くソマリの少年やキクユの老人らの持つ、西欧とは全く異なるものの見方、自分たちを翻弄する自然界の容赦ない力。こうしたものを、ディネーセンは活き活きと描き出します。
第一章“カマンテとルル” ではソマリの少年カマンテがディネーセンの料理人となり、驚くべきセンスで西欧料理をものにした様子にこころ踊ります。ルルと名付けられた野生のブッシュバックが、警戒しながらも強い好奇心でディネーセンに接近していく様も、愛に満ちた、しかしそれに溺れない正確な描写で緊張感のある素晴らしい記録になっています。
他にもソマリ族とキクユ族、マサイ族との関係や彼らの独特の慣習、統治下での問題や部族内での問題、など、実に興味深く読みました。
終盤は友との別れや農園を離れるまでの記録で、読んでいて辛いのですが、ディネーセンが最後まで誠実に過ごしたこと、歯を食いしばってだと思うのですが、この記録を残したことに、精神の強さと気高さを感じました。訳もすばらしく、本当によいものを読みました!
https://www.shobunsha.co.jp/?p=854
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