『0歳児がことばを獲得するとき』
霊長類のコミュニケーションなどを専門とする著者による、ヒトの赤ちゃんがことばを獲得するまでの過程を追ったレポートです。
よく、人間は他の動物よりも未熟なまま生まれてくる、と聞きますが、本書によるとどうやらそうとは言い切れないようです。お腹の中ですでにコミュニケーションの準備を始め、生まれてすぐ、おっぱいを飲むことを最優先するために発声に適した構造にまだなっていないような状態でさえ、おっぱいを含む唇を使って母親に何かを伝えようとしているというのです。そして3ヶ月ほどして、発声に適した口腔に近づくと、今度は大人が「かわいい」と思うような発声で、大人のおうむ返しをくりかえしながらことばを獲得して行く。
また、母親もそれに応じておそらく無意識に、赤ちゃんを揺すったり、「母親語」(赤ちゃん言葉とは違い、赤ちゃんに語りかける時の独特のイントネーションをこう呼んでいます)を使ったりしているというのも驚きです。そんなことしてる? …してるか。うむー。
それぞれを検証するための実験も興味深く、ニホンザルは専門としても、フジ三太郎やパタリロまで登場するしなやかな思考に心踊ります。
ヒトはコミュニケーションの動物であることがよくわかりました。全体を通して、赤ちゃんや母親への温かな視線も感じられ、娘のこれからの言葉獲得への道を私も温かく興味深く見守りたいと思いました。
2011.8.1
※10年後の私からのコメント
子どもが成長していく様が、愛おしいというよりも興味深くて面白くて仕方がなかった頃ですね。「どうやって言葉をしゃべれるようになっていくんだろう?」 知りたい知りたい、という好奇心から借りた本。
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