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読書📚何もしないほうが得な日本


「何もしないほうが得」が生み出される背景

①全体と個が調和する「前提」に立っているから

日本の組織では、全体の利益と個の利益が調和することを"暗黙の前提"にして制度が作られているため。(ここが問題の出発点)

契約やルールで定めなくても利己的な行為をする者はいないことが前提のため、本音(利己的な本音)を公に語れない。

会社、より具体的にいうと上司や人事部に「やる気」のあるところをアピールする姿は、会社はもとより、たいていの組織のなか、さらにいえば日本社会全体にみられる現象といえる。

私はそれを「見せかけの勤勉」と呼んでいる。

必要がなくても周りが残っていたら残業したり、有給休暇をほとんど取得しなかったり、存在感を示すため会議で意味なく発言したり、がその例である。

「情意(態度や意欲)」という曖昧な評価基準があるのも日本の組織の特徴。

結果、組織が空洞化する。

②共同体の空洞化「組織がどうなろうと、かまわない」

本音を語れない日本の組織には、メンバーどうしの情緒的な結びつきや連帯感は乏しく、利害関係が強い紐帯になっている。

本来の共同体とは似て非なる、
利益共同体」に近い。

メンバーの利益を優先し、突出した成果や抜け駆けは周りが迷惑するので、波風を立てず分に甘んじることが良しとされる。

メンバーどうしの利益を重視した部分最適が維持されているだけのため、経営はジリ貧になっていく。

組織のために我が身を捧げる「情緒的コミットメント」はしないかわりに、功利的、手段的なコミットメントをし、見かけ上献身しているよう振る舞う。

③「ゼロサム」ゆえ、なにもしない

クローズドな共同体組織は、
「ゼロサム」の原理に支配されている。

誰かが得をすれば誰かが損をし、だれかが抜け駆けをすると他の人にしわ寄せが及ぶ関係。

管理職にとっても部下のチャレンジは不都合。

失敗は自分の責任。部下が無謀な挑戦をしても、自分が管理できていない印象を上層部に与える。部下が挑戦して成功を収めたら、部下の存在感が高まり自分の顔が潰れるかもしれない。

同僚もチャレンジする人を歓迎しない。

2022 年ウェブ調査によると、
「自分から新しいことに挑戦するチャレンジ精神あふれる新人に入ってきてほしいですか?」

の質問に対し、70.9%が「そう思う」と回答。

ところが、
「同僚として積極的にチャレンジする人と、周りとの調和を大事にする人のどちらを好みますか?」
の質問には7割が「調和を大事にする人」を選ぶ。

理由としては
・面倒を起こしたくないから
・楽だから
・空気を乱されたくない

総論賛成、各論反対」こそ社員の本音。

「働かないオジサン」は制度の被害者


社員の貢献度と、会社から受け取る報酬は必ずしも一致しない。

年功序列では、若いときは貢献度以下の報酬しか受け取らないかわり、中高年になると貢献度以上の報酬を受け取る。

貢献度と報酬の線が交差する点は平均45歳。

定年まで働くともとを取れる仕組みになっている。中年以降は転職は割に合わず、仕事に対して保守的になるのは自然。

じゃあ、どうすればいい?

ここから本書の肝なので、気になる方はぜひ読んでみてください。

大事なのは、個人個人の利害は異なり、それは全体の利害と必ずしも一致しないという当たり前の現実をまず直視すること。
そして、自由に本音を語れること。

一人ひとりのメンバーが開かれた世界で生活し、多様な利害関係をもっていることを前提に、組織を設計し直すこと。

メモ↓
・だれかの「する・しない」がだれかの不利益やしわ寄せにならない仕組みづくり
・ジョブ型雇用(役割さえ果たせばOK)
・オフィスの仕切りで集中
・いつ退職しても会社と企業が損失を被らないセーフティネット
・非「メンバー」や多様性との競合で風穴

***

感想

心理的安全性からさらに一歩踏み込んで組織の構造の問題に切り込んでいるのが本書の特徴のように感じました。

心理的安全性だけでは「何もしないほうが得」の旨味はひっくり返せないのでしょうね。

利己的な欲求を公に開示できないこと。
表向きは「24時間働けます」の顔をしていたほうがお得なこと。

それがゆえ、
メンバーどうしでお互いの利益を尊重しあい、
組織の利益より部分最適で生き残ろうとすること
「働かないおじさん」が合理的なこと。

何が悪いん?
と思いましたが ←え

働く人にとっての全体最適さえ「しない」流れになってしまうのはもったいないなと思いました。

本書おすすめです!
心理的安全性だけに委ねず組織の構造をここまで明確に分解し言語化してくれる本に初めて出会った感覚←読書歴1年半がそれ言う


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