「こどもと自然(小澤紀美子編著)」読後メモ
これは、こども環境学会の本である。建築基本法制定準備会の発足からまもなく、仙田満先生たちが立ち上げた設立総会も覚えている。今は公益社団法人として、また国際的にも立派な学会活動をしている。建築基本法の準備会が当初の200人ほどから全く増えていないのに、こども環境学会は1000人を超える発展ぶりである。建築の社会への役割と言う意味では、建築基本法ともつながる活動と思っている。
小澤氏の「こどもは自然の中で育つ」を軸に自然教育・環境教育が語られている。ある意味、蘆花の「自然と人生」にもつながるし、宮沢賢治の数々の童話ともつながる。こどもの頃の原風景がその後の自分に影響を与えているという仙田の調査結果(p.56)なども引用されている。
今の都内の保育園や幼稚園、小学校の環境を思うと、自然に触れる機会が、リアルでなくなっていることを憂える。そして、そのことの大切さを、国のみならず、自治体や教育界がどれだけ認識しているのかと、疑問に感じているので、各章、納得することばかりである。
キャンプを通してこどもの自然体験支援をしている﨑野隆一郎との対談、仙田満と東京農大の進士五十八との対談なども同じ論調である。公園も昔はこどもたちにとって、寺や神社がそんな役割も果たしていたが、今は小さな児童公園には、数えるほどの遊具があるだけで、ほとんど自然がない。建築という立場からも「こども」や「自然」をもっと考える必要がある。
富山和子著「ひみつの山の子どもたち」も紹介されている。梅原猛著「森の思想が人類を救う」も司馬遼太郎著「二十一世紀に生きる君たちへ」も自然とのつきあい方が記されている。
また、学校教育の視点からも論じており、「学校知」と「生活知」を統合していく場が地域であるという。(p.187)最後には、国民総幸福(GNH)を唱えるブータン国王に会いにブータンまで行く話も出てくる。
こどもとこどもの環境を考えることは、まさに、どう生きるか、どう暮らすかを考えることであり、こども環境学会の活動が、これからのまちのあり方の議論につながることを期待する。持続可能とはそういうことであり、地域創生とはそういうことだ。
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